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暴動事件を防ぐために。 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2007/02/16 00:00

暴動事件を防ぐために。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 ドイツW杯直前にサッカー界を揺るがした不正問題から半年、またもイタリアのカルチョに危機が訪れた。2月2日、カターニャ−パレルモ戦で、サポーターの暴動に巻き込まれた警察官が死亡する事件が発生したのだ。

 もともと2003年にアンティ・バイオレンス法(安全法)が公布されたのだが、その効果は薄く、国内の市営スタジアムはいまだ安全性に欠けていた。そのためイタリア政府は7日、スタジアム内外での暴動を阻止する新安全法を公布。これにより、安全基準を満たしていない国内の競技場は当面、無観客試合の実施を余儀なくされた。

 ただ、この新安全法も、まだまだ十分とはいえない。

 新法は、自動改札機設置の義務付けや、アウェイ戦への応援ツアー廃止、エスケープゾーンの拡張などスタジアム外の安全については充実しているものの、スタジアム内に関してはビデオカメラの設置程度に留まっている。つまり、安全基準をクリアしたスタジアムも、内部の安全管理においては改善の余地が残されていると思えてならないのだ。

 スタジアム内の器物を壊して得た金属パイプを手に、試合中にスタジアムを抜け出したサポーターが警察官らを襲撃したのが今回のカターニャ暴動事件だった。振り返れば、3年前に起きたアベリーノ(当時セリエB)の暴動も、サポーターがスタジアム内のトイレの蛇口を破損。その一部を警察官へ投げつけたもので、試合中のスタジアム内での悪事が発端となり惨事に至ったケースが後を絶たない。ところが現状では、ローマのオリンピックスタジアムを除いては内部の警備が完璧でないため、その死角を突いた「事件」は今後も起こる可能性大である。

 イタリアでは警察官、ボランティアのスチュアート(警備員)が、観衆のように試合を観戦しながら警備するのが一般的だ。スタンドを監視したり、スタジアム内を巡回したりする専門の警備員は存在しないといっていい。彼らは問題が起きれば対応するが、大切なのはトラブルを未然に防ぐことである。

 そのためには、たとえばオリンピックスタジアムが実施しているように、主催側がスタンドを監視する、またはスタジアム内を巡回する専門警備員を雇い、警察側と役割を分担して安全管理に努めることだ。イタリアでは、試合中にスタジアム外で暴動が起こるケースも多いので、試合開始後はスタジアムの出入りを禁止することも効果的だと思われる。そして、リーグの公式戦では安い立見席を完全撤去し、スタンドを全席指定にするというのも一案だ。それには年間シートの価格帯をサポーターが納得するものに設定し直す必要がある。

 安全を保証し、イタリアサッカーを再び魅力あるものにするためには、思い切った改革が必要不可欠だと思う。数々の暴動事件で犠牲になった人たちのためにも、そしてこれ以上、死者や負傷者を出さないためにも、イタリアのカルチョは暴動を完全に払拭するために立ち上がるべきなのだ。

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