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ハッスルポーズ誕生秘話 

text by

丸井乙生

丸井乙生Itsuki Marui

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photograph byTadahiko Shimazaki

posted2004/06/04 00:00

ハッスルポーズ誕生秘話<Number Web> photograph by Tadahiko Shimazaki

 それでは、ご一緒に参りましょう。まずは仁王立ちして下さい。拳を握って肘を

90度に曲げ、応援団のような体勢を取ります。「ハッスル」と言いながら、その腕を勢いよく背後へ引くと同時に腰を突き出す。戻す。繰り返す。元気が出ましたか?

 恥ずかしいですか? この独創的な「ハッスル・ポーズ」は、巨人の清原和博内野手、男子ゴルフの_年賞金王・片山晋呉、SMAPの香取慎吾らがテレビで絶賛公開中。考案者は小川直也と橋本真也の「OH砲」だ。

 一般的には、PRIDEヘビー級グランプリを見て知った方が多いだろう。激勝を飾った小川がリング上で披露したアレだ。しかし、出典はプロレスにある。PRIDEの運営会社「ドリーム・ステージ・エンターテインメント(DSE)」は今年、プロレスのイベント主催へ本格進出した。そのシリーズ名称が「ハッスル」。ふざけた名前だ。1963年の流行語をリバイバルした大会は1月4日に第1回を行い、OH砲はその場で「ハッスル、ハッスル」とポーズを初披露。観客、関係者の度肝を抜いた。

 なぜハッスルなのか。英語の辞書を引くと「Hustle=張り切ること、頑張り」とある。榊原信行DSE代表は「こんな時代ですから、明るく爽やか、且つ元気の出る印象の名前を選びました」と説明する。かつての流行語におけるハッスルの同義語にはモーレツなどがある。真面目に考察してどうする。

 「直感ですね」。原案者の橋本は言い切った。

 「子供の頃、爺ちゃんとか叔父ちゃんとかが“ハッスル”しなきゃって言ってたのを覚えてる。当時は何のことを言ってるのか分かんなかったけど、“頑張んなきゃ”とは思ったよね。ハッスルに出ることが決まって、あのポーズを最初にスタッフに見せたら笑われてさ。反応が良いなと思ったのに“本当にやるんですか”って止めるんだよ。腰を振るから卑猥だって。でも、人間は腰だから」。

 小川と改良を重ねた結果、「スリー、ツー、ワン」とカウントダウンした後に「ハッスル、ハッスル」と連呼する型が決定した。橋本が代表を務めるプロレス団体「ZERO−ONE」では、大会の最後を締める掛け声が「スリー、ツー、ワン、ゼロワーン」。発想は似て非なる、いや同じだ。

 橋本によると、日本で最もハッスルしている人ランキングは1.杉本彩2.小泉首相3.サラリーマン金太郎だという。今後、ハッスル・ポーズをやってほしい人ランキングは1.渡辺謙2.水戸黄門3.子連れ狼4.暴れん坊将軍。やってほしいというよりも、ただ橋本がファンだというだけだった。

 ハッスル・シリーズは、悪VS善の構図だ。マニアの物となった日本のプロレス界壊滅を目指す高田延彦総統が、海外の強豪による「高田モンスター軍」と率い、OH砲軍と激突。第2回までは高田軍が優勢だったが、第3回でOH砲が勝利を収めた。7月25日には「ハッスル4」が横浜アリーナで行われる。

橋本は言う。「全国の老若男女、生きてる限りはハッスルして頑張ろうや。ハッスルは“1、2、3、ダーッ”を抜くぞ」。暗い世の中だからこそ、ご一緒に参りましょう。恥ずかしいですか? でも、思わず笑顔になりませんか?

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