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速すぎるブラウンGPと
バリチェロの微妙な関係。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byGetty Images

posted2009/05/14 06:01

速すぎるブラウンGPとバリチェロの微妙な関係。<Number Web> photograph by Getty Images

 ヨーロッパラウンドの緒戦スペインで、ブラウンGPが開幕戦オーストラリアに次ぐ4戦ぶりのワンツーフィニッシュを達成した。ジェンソン・バトンが今季4勝目、ルーベンス・バリチェロが2回目の2位を飾ったが、この日のブラウンGPチームの勝利の内容は、前4戦よりもさらにライバルを圧倒するものだった。

 予選はポールポジションがバトン、2位セバスチャン・ベッテル、3位バリチェロ。しかし、スタートはバリチェロが「グレート!」と自賛するほどキックとその後の伸びが良く、バトンのスリップストリームからアウトに抜け出し、見事1コーナーにホールショットを決め、バリチェロ-バトンのブラウンGPワンツー体制が出来上がった。序盤はトップの2人が1.5秒の間隔をおいてランデヴー走行。後方のマッサがベッテルを抑え込む形でじわじわ離れていき、先行する2人にとっては願ってもない状況である。

バリチェロが最速ラップでトップ。バトンは遅れていたのだが……。

 その後のブラウンGP勢は18周目に2位バトンが、19周目に首位バリチェロが1回目の給油に入ったが、ここでレースの行方を左右する事実が判明。バトンの給油時間が9.3秒だったのに対し、バリチェロは6.7秒。バトンが2回ピットストップ、バリチェロが3回ピットストップ作戦であることが判明したのだ。

 当初2人とも3回ストップ作戦だったのだが、「3回ストップにするとコースに戻ったとき、ロズベルグの真後ろになってしまうことが予測された」(バトン)ため作戦を変更したという。その理由は分かるとしても、不思議としか言いようがないのは、バトンが2回目、バリチェロが3回目の給油をした後、すんなりポジションを逆転させてしまったことだ。結局、バトン-バリチェロの態勢となってそのままチェッカーとなったのだが。

 レース中盤に最速ラップを叩き出し、一時はバトンを13秒以上リードしていながら2位に終わったことについてバリチェロは、「3セット目のタイヤが良くなく、4セット目のタイヤも同じような状態だった。ただしタイヤそれ自体が悪かったのではなく、クルマの何かが壊れていたのではないかと思う」と、奇妙な言い訳を述べた。

 関係者の多くの推測は「ブラウンGPの作戦変更は、バトンをバリチェロの前に出すための方策だったのではないか」というもの。チームオーダーはご法度ながら、無線での指示など物証がなければ合法。バトンの戴冠を最短、かつ確実にするためのロス・ブラウンの判断であったとすれば、それほどブラウンGPには(今の時点に限っていえば)余裕があるということになる。

“シューマッハーの後ろを走る男”は、再びバトンの後ろを走るのか?

 果たして、哀れなバリチェロは永遠に優勝を手にできないのだろうか? 

 そんなことはない。バトンの戴冠が決まってしまえば、チームはコンストラクターズタイトル獲得だけを考えればいいわけだから、バリチェロの優勝「でもかまわない」。ということは、自身の優勝のためには、バトン戴冠まで彼の“後詰”を誠実に続けることがバリチェロに与えられたミッションということになる。フェラーリ時代、忠実にシューマッハーの後ろを走り続けたように、だ。

 F1ドライバー最年長となる36歳のバリチェロは、次戦モナコが通算277戦目となり、F1最多出場記録を更新中だ。バトンを抑えてモナコ初優勝を飾るのか、あるいはバトンのバックアッパーとして通算29回目の2位に甘んじるか――。それはそれで見ものではある。

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