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レアルの奇妙な現状。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2004/10/07 00:00

レアルの奇妙な現状。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 ゴールが少ない。失点も少ない。10月3日のデポルティーボ戦で先制され逃げ切られたレアル・マドリーは、5節で4得点4失点というなんとも奇妙な記録を残している。4得点はあまりにお寒いが、4失点のほうはまずまずの数字だ。

 4得点のうち、2ゴールはベッカムの右足に助けられた。得点ランキングに名を連ねるレアルの選手は、そのベッカム(17位)ただひとり。昨シーズンの得点王ロナウドは開幕戦の1ゴール以降は不発が続いているどころか、デポル戦は戦線離脱だから困ったものだ。

  デポル戦では27本ものシュートを放つも、枠に飛んだのはたったの3本。対するデポルは、シュートが5本、枠には1本。これが決勝点だから、運にも見放されたというわけだ。

 32歳のジダンとフィーゴが母国の代表を引退したことは朗報のはずだが、デポル戦での両翼は明らかにドリブルにキレがなかった。縦への突破どころか、センタリングがことごとくミスになる。彼らがどん臭く映ったのは、精神的なところに原因があると思う。カマーチョともっともソリが合わなかったといわれるジダンは、カマーチョが辞任したことで、もしかすると責任を感じていたりするかもしれないタイプである。ジダンに2タッチで叩けと指示を出したと噂されるカマーチョにも、問題はあるけど。また、マスコミに向けカマーチョ批判を口にしたことでベルナベウの客席から罵声を浴びたロベルト・カルロスも、どこか元気がない。あれほどファンに愛されていたブラジル人も、あのときのブーイングは堪えただろう。

 だから、ワールド・カップ予選でいっときのリーグ中断は、リフレッシュするにはいいタイミングだ。それぞれが自らのスタイルを取り戻すには、時間が必要である。

 さて、4失点という数字のほうは、決して悪くはない。しかし、エスパニョール、ビルバオ、ラ・コルーニャに奪われた4ゴールはサイドから振られたケースで、パボンとラウール・ブラボのセンターバック起用は今シーズンも冷や汗ものだ。エルゲラをベッカムの横に固定するのがレアルの完成図だが、サムエルとの新コンビでは、やはりエルゲラを最終ラインに置かざるを得ないのが現状だ。これに負傷リストにいるウッドゲートが加わる予定だけれども、スペイン語の理解力の乏しいイギリス人も、これはこれで不安材料である。サムエルもカシージャスも、嘆いているに違いない。

 ロベルト・カルロスが、12月にはスペインのパスポートを取得できるという。ペレス会長が外国人枠をフル活用する動きもある。南米から、特にスペイン語圏のアルゼンチンから新たな選手を、というお話で。ドクターチェックでポンコツだと判断して、サラゴサに放り出したミリートとの契約がすんなりいっていれば、これほどの騒ぎにはならなかっただろうか。エトーにしても、オーウェンよりは輝いたような。後の祭りではあるけれども。

 でも、それほど悲観することもなかろうか、と。過去のデータと比較して、2000年以降、もっとも貧弱なゴール数ではあるが、失点の面ではもっとも安定している。開幕前にフィーゴに続いてジダンを獲得した2001−2002年のシーズン、この時期には12位まで沈んでいた。それが、冬には首位に立っていた。昨シーズンのバルサにしても、序盤戦は似たようなテンションだったが、その後、躍進している。

 心配の種は、カマーチョのあとを引き継いだガルシア・レモン監督だ。能力は未知数だが、デル・ボスケやケイロスが編み出してきたアイデアに比べると、彼の選手起用はオリジナリティに欠けるようだ。ジダンとロベルト・カルロスのコンビネーションはデル・ボスケが、ベッカムを中央にコンバートしたのはケイロスが考えた策だ。セラーデス? これはカマーチョの好みで、ガルシア・レモンのオリジナルは見えてこない。過去をなぞっているだけ。突然の監督交代劇という荒波のなか、リーグ中断のひとときで一番悩ましいのは指揮官である。

 喜んでレアルの監督を引き受けてくれる時代は過去のものとなった。ガルシア・レモンがもしも限界を感じても、身内でなんとかするしか道はないだろう。メキシコで奮闘するウーゴ・サンチェスに賭けてみるのも、面白いと思う。大博打だけど、ムードは明るくなる。すっかり老けたが、あの選手たちと渡り合える気がする。

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