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サンタクルスのケガ 

text by

安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byAFLO

posted2005/11/09 00:00

サンタクルスのケガ<Number Web> photograph by AFLO

 バイエルンのエースFW、ロケ・サンタクルスが10月29日の1FCケルン戦で右膝内側の十字靭帯を損傷する大ケガを負った。サイドライン近くの、たいして重要でもない1対1の競り合いでの出来事だった。後半開始、わずか10秒後のことだ。

 ケガは予想以上に酷く、チームドクターの診断によれば「復帰まで6ヶ月かかる。世界的名医であるアメリカのリチャード・ステッドマン医師の手術を受けることになる」そうだ。

 サンタクルスはこれまで何度もケガで悩まされている。01年11月に2ヶ月の重傷を負ってからというもの、02年は2度(計10週間)、03年は2度(計3ヶ月)、04年は1度(計6週間)、そして今年は3度もケガを繰り返している。

 9回目となる今回は、もっとも深刻である。これで来年のW杯(パラグアイ代表)出場も危うくなった。さすがにショックの色が隠せない。ケガの翌日は「声もかけられないほど落ち込んでいた。1日中、ベッドに潜って食事もとらなかった」(ギゼレ夫人)ほどだ。

 ようやく落ち着きを取り戻したサンタクルスは「僕は自分の運命を呪いはしない。誰かが生涯ケガなしでプレーすれば、一方で誰かがケガをするものだ。今は11月10日に生まれる予定の第二子と妻の健康を心から祈っている。事前の診断で子供は女の子というのが分っている。名前はもう付けた。リオレーリャだ」と、明るく装う。

 今季終了後、バイエルンとの契約が切れる。更新するかどうかは今回のケガで先行き不透明になってしまった。だが本人は焦っていない。「子供の誕生が最優先。手術は子供が生まれてからやる」と、担当医が欧州を巡回中であるのに、あえて手術の延期を申し出た。

 屈強なDF相手に身体を張るプレーを厭わないタイプだけにケガが多いという指摘もあるが、そこまで一生懸命にやる理由の1つに、愛する兄オスカルの不慮の死がある。彼はプレーを通して心の整理をしたいのだ。だからこそ、死に物狂いでプレーするのだ。

 こういう選手を私は無条件で応援したくなる。なにより、彼の心根が優しいことに感心してしまう。ちなみに彼の苗字はスペイン語で「聖なる十字架」を意味する。だからこそ、「僕が度々怪我をするのは神に見捨てられたからじゃない」と言うのも自然と頷けるというものなのだ。そうなったらもう、最後はこうしか書けない。「がんばれ、サンタクルス。半年後に再び雄姿を見せてくれ!」

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