MLB Column from WestBACK NUMBER

キャンプ地フロリダの斜陽 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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posted2008/02/26 00:00

キャンプ地フロリダの斜陽<Number Web> photograph by AFLO

 前回予告したように、2月13日にフロリダに入り、スプリング・トレーニングの取材を続けている。

 そんな2月某日、インディアンズの小林雅英投手の取材に向かった時の出来事だった。練習後に話を聞くため、グラウンドをランニングしている小林投手の個人練習の終了を待っていた日本人メディアの中に加わっていた、インディアンズのスタッフ・カメラマンと、側にいたセキュリティーのおじさんとの何気ない会話が聞こえてきた。

 「とうとう今年が最後だね。来年の仕事は何か決まっているのかい?」

 ちょっと気になり会話に割り込んでいったところ、インディアンズは来年からキャンプ地のアリゾナ移転が正式決定しており、現地雇いのスタッフの1人だったおじさんの今後について聞いていたらしいのだ。すでにドジャースのアリゾナ移転は知っていたのだが、インディアンズも同様だったということを、この時初めて知らされた。さらに件のカメラマンによると、インディアンズが来年から使用予定の施設内にレッズも移転を検討中だという。これが実現すると、来年からフロリダとアリゾナのチーム数が、それぞれ15チームになる計算だ。端から見れば、(これで単純に半々になったな)程度のことだと思うが、チームが目減りしたフロリダにとってはかなりの痛手なのだ。

 スプリング・トレーニング中に行われるオープン戦は、アリゾナの場合“カクタス・リーグ”、フロリダの場合“グレープフルーツ・リーグ”と総称されるのだが、自分がドジャースに入団した野茂投手の取材を始めた1995年当時は、フロリダに20チームに対しアリゾナは8チーム(当時は28チームだった)と、完全にグレープフルーツ・リーグに偏った状態だった。それからホワイトソックス、ロイヤルズ、レンジャーズがアリゾナに移転し、さらに新球団のダイヤモンドバックスが加わったため、現在カクタス・リーグには12チームが所属。そして来年3チームが加わろうとしている。

 アリゾナ移転の流れは致し方ないところなのだ。アリゾナは地域を上げてチーム獲得に積極的で、フェニックス近郊の街に次々に新しいキャンプ施設を建設している。来季移転するだろう3チームも、来年完成する新施設を使う予定だ。しかもアリゾナに次々に新設されている施設は、2チームが共有できる巨大施設なのだ。トゥーソン(ダイヤモンドバックスとホワイトソックス)、ピオリア(マリナーズとパドレス)、サプライズ(レンジャーズとロイヤルズ)にある施設がそうで、さらに来年グレンデールとグッドイヤーが加わる。そしてトゥーソン以外、すべての街がフェニックス近郊に分布している。

 新施設のため最新設備が整っているというのもあるが、2チーム共有なのでさらに利便性が高くなる。基本的にオープン戦はホームとアウェーが大体半数ずつだが、2チームが1つの球場を共有することで、両者が試合をすればアウェーの試合でも移動する必要はないため、それだけチーム、選手たちが無駄な時間を省けるわけだ。さらにアリゾナの場合、キャンプ施設がフェニックス周辺に集中しているため、トゥーソンを除けば1時間以内で移動できるのだ。

 一方グレープフルーツ・リーグも、1995年以降タンパ(ヤンキース)、オーランド(ブレーブス)、クリアウォーター(フィリーズ)、ジュピター(カージナルスとマーリンズ)──とキャンプ施設が新設されているし、ベロビーチ(ドジャース)やブラデントン(パイレーツ)などのように球場以外のトレーニング施設を新築、改築しているチームもある。それでもフロリダ州中部から南部の各地域にキャンプ地が散在していることを考えれば、2チーム共有施設が1カ所だけというのは寂しい限りだ。

 これまでもグレープフルーツ・リーグの場合、オープン戦移動が選手たちに評判が良くなく、主力選手たちが長距離移動遠征を免除されるのが通例となっている。そこに来て、来年から3チームが抜けてしまったら、キャンプ地間の隙間がさらに広がることになり、オープン戦を組むのもさらに苦労することになるだろう。

 まだ正式発表されていないが、移動距離を軽減するため、グレープフルーツ・リーグ内でキャンプ地のリロケーションが検討されているらしい。とはいえ、施設を新築、改築したチームを動かすのは難しく、大幅な大移動にはなりそうもない。

 長年フロリダで生活した経験があり、グレープフルーツ・リーグに親しんできた自分にとって、現在の衰退ぶりは悲しい限りだ。とはいえ、カクタス・リーグの利便性に対抗できるほどの打開策がなさそうなのも事実なのだ。

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