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ユベントスは死なない。 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byMaurizio Borsari/AFLO

posted2008/03/31 00:00

ユベントスは死なない。<Number Web> photograph by Maurizio Borsari/AFLO

 「ユベントスはいまだに強いの?」

 先日、友人からそんなメールを受け取った。メールの送り主はサッカーに精通しているとはいえないが、そんな友人でさえ、かつてユベントスがリーグ連覇を成し遂げた無敵のクラブであったことは知っている。ところが、一連のセリエA不正問題をきっかけに、チャンピオンズリーグを始めとする表舞台と疎遠になってしまったために、ユベントスを報じる記事は激減した。従って、友人のように「閉ざされた」ユーベに対して素朴な疑問をもつ人がいるのも無理もない。

 そこで今回は、セリエAに「帰還」したユベントスが、現在もリーグ優勝を狙えるコンペティティブなチームであると力強く宣言するとともに、その強さの正体を描くことにする。

 3月22日のインテル−ユベントス戦。後半4分にMFカモラネージ、後半18分にFWトレゼゲの一撃が炸裂すると、ユベントスは33歳オーバーのFWデル・ピエーロ、MFネドベドを原動力に、徹底的にセリエA王者をいじめ抜き、昨年4月18日のローマ戦以来、本拠地で負けなしだったインテルを2−1で倒したのだった。

 勝利を飾ったユベントスの強さの背景に、ラニエリ監督が描いた「勝利計画」がある。指揮官は、ベテラン三銃士(FWトレゼゲ、FWデル・ピエーロ、MFネドベド)とMFカモラネージらに絶大な信頼を寄せ、彼らのシンボリックな戦い方を優先する、言ってみれば実績のあるものが優位に立つという意識をチームに植えつけたのである。さらに4−4−2の戦術に適応しない選手は、MFティアゴのように優秀なジョカトーレであっても起用を避ける徹底ぶりが、あらゆる戦況に対応できる一体感のあるチームへと進化させた。

 いまのユベントスには、マンチェスター・ユナイテッドのような派手さはない。しかし、ゴール前までのプロセスに美しさを欠かさないユベントスイズムは健在で、流麗なパスと華麗なドリブルで相手の守備網を破るエレガントなサッカーをしている。今季、大一番のカードでことごとく「三銃士」が本領を発揮したことで、指揮官の計画は着々と実現していった。ラニエリ監督は、昨シーズンに活躍したFWパッラディーノやMFノチェリーノの特長を削る気はないが、技術、経験、戦術眼に長けたベテランの魔力がチームを活性化するという期待感にかけたのだろう。

 インテル戦での会心の勝利はユベントスの選手それぞれに朗報をもたらした。

 17ゴールでセリエA得点ランキングトップに躍り出たトレゼゲはフランス代表に復帰。スピードとスタミナでチームを牽引するネドベドは、クラブとの契約延長を確定させ、来るEURO2008へ向けて代表復帰も目指し始めたようだ。デル・ピエーロも、アズーリ復帰へイタリア代表監督に直談判する気になったようである。

 三銃士のパワー健在で、かつての王者はリーグ2位へ、さらには優勝へと追撃態勢を整えている。

クラウディオ・ラニエリ
ダビド・トレゼゲ
アレッサンドロ・デル・ピエーロ
パベル・ネドベド
ユベントス

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