イチローの新ライバル、
ジョー・マウアーの4割挑戦。

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text by Kaechoong Lee

photograph by Gettyimages/AFLO

イチローの新ライバル、ジョー・マウアーの4割挑戦。

 イチローに強力なライバルが出現した。ツインズのジョー・マウアー(23歳)だが、7月5日現在、打率3割9分1厘と、イチローの3割5分1厘を大きくリードしているだけでなく、「テッド・ウィリアムズ以来の4割達成も夢ではない」と、注目を集めている。

 マウアーは、2001年のドラフトで高校生であるにもかかわらず1巡目1位指名されたが、地元セント・ポール市出身とあって、ツインズがかける期待は大きい。高校時代は、野球だけでなく、フットボール(メジャーから上位指名されなかった場合、QBとして名門フロリダ州立大学に進学することが決まっていた)、バスケットボールでも活躍、スポーツ万能選手として知られた。高校4年間(州によっても違うが、アメリカは、4年制の高校が多い)で三振数はわずか1、3年生で三振したときは地元紙のニュースになったほどだった(このとき三振を取った投手は、「一生の宝物」と、記事の切り抜きを今でも保存しているという)。

 マイナーで順調に成長したマウアーに対し、2004年、ツインズは、03年に打率3割1分2厘と大活躍したA・J・ピエジェンスキー(現ホワイトソックス)をシーズン前にジャイアンツに放出してまで、正捕手の座を用意した。しかし、同年開幕直後に膝を負傷、マウアーは、シーズンの大半を欠場するという不運に見舞われてしまった。正捕手となって3年目の今季、ツインズの3番打者として、「天才打者」の呼び声に恥じない実力を発揮し始めた。

 ところで、マウアーは、打撃スイングの「美しさ」でも定評があるが、その「美男子」ぶりでも知られ、女性ファンの人気がとりわけ高い。現在つきあっているガールフレンドが2005年のミスUSAであることでも、その「モテモテ」ぶりがおわかりいただけるのではないだろうか?

 と、グラウンドの内外で、「スーパースター」としての花を開き始めたマウアーだが、イチローとの首位打者争いでは、「ポジションが捕手」という、大きなハンディキャップを背負っている。捕手として首位打者になったのはアーニー・ロンバルディが最後(1938年)だが、捕手の激務をこなしながら首位打者を獲得するのは、他のポジションの選手が4割を達成する(テッド・ウィリアムズの1941年が最後)ことよりも難しいだけに、このハンディキャップは大きい(現ヤンキース監督のジョー・トーリが1971年に首位打者になっているが、この年、トーリは捕手から三塁にコンバートされたばかりだった)。

 イチローとの首位打者争いについて、「若いマウアーが、やがて、プレッシャーに潰される」とする向きもあるが、マウアーはプレッシャーに強いことでも知られているので要注意だ。というのも、マウアーは、兄二人がツインズ傘下のマイナーリーグ選手と、小さいときから兄二人を「ライバル」として育ってきただけに、年上・格上の選手と競うことについては、何のプレッシャーも感じていないからだ。

 兄二人だけでなく、マウアーの祖父、ジェイクも、昔、マイナーリーグの選手だったが、祖父がマウアーにかけている「プレッシャー」は、「大リーグ史上最大」と言ってもいいほど大きいプレッシャーである。ドラフト直後にマウアー一家がメトロドームに招待された際、祖父は、初対面のツインズGMテリー・ライアンに向かって、開口一番「君たちは、テッド・ウィリアムズ以来、初めての4割打者をドラフトしたのだぞ」と宣言したことで知られているのである。祖父から「4割打者になれ」というプレッシャーをかけられているマウアーが、イチローとどんな首位打者争いを演じるのか、今季最大の見所の一つとなった。

(更新日:2006年7月10日)

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筆者プロフィール

李啓充

'80年京都大学医学部を卒業し、'90年に渡米。2002年、ハーバード大学医学部助教授を辞して、文筆業に専念。「レッドソックス・ネーションへようこそ」(ぴあ)、「怪物と赤い靴下」(扶桑社)が好評発売中


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