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バルサとレアル、冬の補強のポイント。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2005/01/25 00:00

バルサとレアル、冬の補強のポイント。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 ほんの1年前のことなのに、都合の悪いことはすっかり忘れている。昨年の今頃、シーズンの折り返し地点でFCバルセロナは首位レアル・マドリーに18ポイント差をつけられていた。ところが、レンタル移籍のダービッツが加わったことであれよあれよと波に乗ったバルサは、12位から優勝の可能性まで感じさせるまでに連勝を続けた。信じられないことにレアルは残り7試合で6敗を喫する。こういう都合のいいことは覚えているらしく、この昨年のようなリズムで行けば27勝4敗11分け、リーグ記録の92ポイントで優勝だ、なんてはしゃいでもいる。

 だが、2005年に入ってからのバルサは苦しんでいる。ビジャレアル戦でボコボコに痛めつけられると、ロナウドから「バルサは昨年のクリスマスまでは良かったのにね。7ポイントなんてなんでもないよ」と口にされるほど落ち込んでいる。続くレアル・ソシエダ戦でも、辛うじて勝利をものにしたが、ニハトに決定的なチャンスを決められていれば形成は逆転していただろう。とはいっても、1シーズンすべての試合をパーフェクトにこなすのは無理な話。相手に分析されれば負傷者も出る。選手のコンディションもさまざまだ。バルサには、訪れるべくして訪れたターニング・ポイントだろう。長いシーズン、進化なくしてタイトルは獲れない。

 補強は急務とされている。モッタ、ガブリ、エジミウソンの穴はカバーできても、ラーションの今期離脱は難題だ。ベンチにはFWがいない。バルサBのメッシはアルゼンチン代表としてアンダー20南米予選に召集されて留守になる。となると、エトーに期待が寄せられるわけだが、彼は簡単なゴールを外して困難なゴールを決めるから試合を難しくしてもくれる。得点王の座をひた走り、何度もバルサに歓喜をもたらすところは頼りになるけれども、個別のシュート練習をわざわざライカールトから命じられるあたり、もうひと皮剥けて欲しいと思われているのが伝わってくる。

 フロントもバタついている。バルサの雰囲気に陰りが見え始めたのと、副会長のサンドロ・ロセルが今季限りでクラブを去ることに決まったのとは同時期だった。サンドロはナイキのブラジル担当だったこともあり、ロナウジーニョやデコ、ベジェッティを連れてきたブラジルとのパイプ役で、ロナウジーニョのスペインでの父とも呼ばれていた。この冬の移籍マーケットでも、サンドロはラポルタの右腕として動いていた。だが、彼はクラブから離れることになった。何が起こったのか、真相は闇の中である。

 そうこうしているうちに、レアル・マドリーとのポイント差は「7」と煮詰まっている。昨シーズンのことを思うと、バルサも気楽ではいられない。レアルのペレス会長はがらりと首脳陣の顔ぶれを変えてきた。サッキをスポーツ・ディレクターに決めたのも驚きだったが、ルシェンブルゴが監督というのも予想外だった。まるで、バルサのブラジル路線を断ち切るかのような戦略だ。

 テロ騒ぎで延期された「6分間」の試合での勝利もさることながら、「6対3で負けてもおかしくなかった」とカシージャスが振り返ったアトレティコとのダービーでの、シュート3本で3ゴールというあたりにも、ルシェンブルゴの力を恐ろしく感じる。何よりも、ロナウドが気を吐いている。ゴールだけでなく、走ることが嫌いなロニーがロベルト・カルロスのポジションまでカバーして守備をするようになったのには驚くしかない。

 冬の移籍マーケットでサッキはミラン時代のライカールトのような選手を望んでいた。毎年、ビエイラには振られ続けてきた。そこで、レアルが獲得したのが「俺はフーリガンじゃない」と、笑いをとったグラベセンだった。チャンピオンズ・リーグに出場できる選手ともなると限られてくるなかで、エバートンの問題児がレアルに加わった。「スペインは試合開始の時間が遅すぎる。いつもなら、寝ている」などと平気で口にするだけに、ベルナベウでのグラベセンの評価はまちまちだ。けれども、ベッカムからすれば「これで、攻撃に意識を向けることができる」と。もちろん、昨シーズンのバルサでのダービッツのような、チームに安定感をもたらすような仕事をグラベセンができれば、だけれども。

 バルサもアルベルティーニに加え、ウディネーゼのイアキンタを補強するといわれているから、冬の補強でバルサとレアルは何かが変わるだろう。昨日までは笑っていても、突然真っ暗になるのがフットボールの不思議なところで、そのまた逆も起こりうる。「絶対」なんていう言葉がナンセンスなのをひしひしと感じる。

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