オフサイド・トリップBACK NUMBER

ファーガソンにも打つ手なしか?
マンUとイングランドの複雑なGK問題。 

text by

田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2011/05/26 10:30

ファーガソンにも打つ手なしか?マンUとイングランドの複雑なGK問題。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

現役引退の理由として「そろそろ家族のことを考えたい」とコメントしたマンUの正GKファンデルサール。写真は、2008年のFIFAクラブワールドカップで世界一になった時のもの

わずか20歳のマンU・正ゴールキーパーが誕生!?

 まず、契約交渉がすんなりまとまれば、デゲアは若干20歳でマンUに正ゴールキーパー候補として招かれることになる。これはトップクラブの正ゴールキーパーの年齢としてはかなり低い。守備陣全体の若返りが急務だったとはいえ、ファーガソンはずいぶんと思い切った賭け(チーム改造)に出たことになる。

 と同時に浮かび上がってくるのは、イングランド代表のGKの人材難だ。

 たとえば今季のプレミアリーグ、上位10チームの中で、イングランドの選手を正ゴールキーパーに据えているのは、わずかに1チーム(マンチェスター・シティのジョー・ハート)。

 しかも、このような人材難は決して目新しい現象ではない。

 デイビッド・シーマンがアーセナルから抜けた後、上位チームでそこそこ試合に出場したイングランド出身のキーパーはポール・ロビンソン(元トットナム)ぐらいだし、当のマンUにしても、イングランド出身のゴールキーパーで名を馳せた選手というと、50年も前のアレックス・ステップニーにまで遡らなければならないのが実情だ。

 当然、イングランド代表チームも、ゴールキーパーに関しては頭を悩ませている。

 まともなキーパーがいれば、ロバート・グリーンが南アでウェストハムサポーターの面子を潰すこともなかっただろうし、サッカー関係者がアーセナルのマヌエル・アルムニア(スペイン国籍)を帰化させてはどうかなどと、真顔で話しあったりするはずがないのである。

1960年代から70年代、ゴールキーパー王国だったイングランド。

 1960年代頃から'70年代頃にかけてのイングランドといえば、IFFHS(国際サッカー歴史統計連盟)が20世紀の最優秀ゴールキーパーランキングで2位に選んだゴードン・バンクスや、同8位のピーター・シルトンを筆頭に、ゴールキーパー王国とも呼ばれるほど分厚い選手層を誇っていた。

 しかし最近では「セーフハンズ」と呼ばれていた頃のシーマンが、1999年度のランキングで6位に入ったのを最後に、イングランド人GKはずっと疎遠なままになっている(そもそも'87年に投票が始まって以来、ランキングに登場したイングランド人は、シーマンとダービー・カウンティ時代のシルトンのみ)。イングランドではFWや指導者不足がよく指摘されているが、GKの人材難もただごとではないのである。

【次ページ】 どんな結果であれ、イングランド人GKはマンUに来ない。

BACK 1 2 3 4 NEXT
アレックス・ファーガソン
マヌエル・ノイアー
エドウィン・ファンデルサール
マールテン・ステケレンブルフ
ダビド・デゲア
マンチェスター・ユナイテッド

海外サッカーの前後の記事

ページトップ