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なぜか目立つDFのゴール。 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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posted2005/10/07 00:00

なぜか目立つDFのゴール。<Number Web> photograph by AFLO

 2日のレッジーナ戦で、2ゴールをあげたミランのDFマルディーニ(37)。衝撃的な2発に観衆5万5千人をのみこんだジュゼッペ・メアッツァスタジアムは歓喜で沸いた。

 土砂降りのなか90分間を戦い終え、報道陣の前に姿を現したベテランは開口一番、「チャンスがきたら、ゴールをたたき出す」と力強く言い切った。

 「いざという時には決める」

 その言葉どおり、前半5分の先制シーンは圧巻だった。左サイドでボールを得ると相手DFの股間を抜くドリブルでゴール前に果敢に攻め入り、右足で放った低めのシュートは相手GKの左をすり抜け、ゴールに突き刺さった。同20分にも右CKからヘディングシュートを決めて2−0とレッジーナを突き放し、セリエAが誇る最強ディフェンダーはチームの攻撃を取り仕切った。

 セリエA出場572試合目で奪った初の1試合2ゴール。年齢と膝の故障を感じさせないパワフルな動きに加え、ストライカー顔負けの得点能力。

 「流れを読んでいたから、思い切ってシュートした」

 大雨で最悪のピッチに伴い、救世主MFカカのいない厳しい状況のなか、チームを救うべきキャプテンが、豊富な経験と個人技を駆使してミランを勝利に導いたのだった。

 「ビエリは(今日も)決定機を逃した。僕のゴールが彼への不安材料になっては困るけれど……。クレスポも精彩を取り戻すのに時間がかかったから」

 世界中を魅了するミランのストライカーたちが不発の現状に、マルディーニは思わず不満をこぼしたが、「チームの柱として全力を尽くす」と、37歳とは思えない安定した活躍で健在をアピールした。

 マルディーニの活躍に刺激されたのが他クラブのディフェンダーたちである。第6節では、DF6人(うち5人が32歳以上)が得点を挙げ、本職は守りのはずの守備陣が積極的な攻めを見せつけた。

 エンポリ戦では惜しくもゴールには結びつかなかったが、パレルモのDFテルリッツィ(24)はその日もゴールを狙った。開幕からすでに4ゴールを叩き出し、ゴール数でトレゼゲ(ユベントス)、シェフチェンコ(ミラン)と並んでいる。ボールを奪ってから速攻で迫るテルリッツィの持ち味が今季パレルモの攻撃の切り札となっており、チームメイトのFWを出し抜いて、「僕も決める」とゴールへのこだわりを口にしている。

 ベテラン、マルディーニにはじまり、若手テルリッツィと、ディフェンダーの勝利への執念がゴールを呼び寄せる。今季セリエAの見所は、ディフェンダーの得点シーンにあるかもしれない。

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