佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

スイート&ビター 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2007/03/23 00:00

スイート&ビター<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 最終セッションまで残った予選は歓喜また歓喜。しかし2ポジション落ちの12位でフィニッシュしなければならなかった決勝はやや消化不良気味。佐藤琢磨の2007年開幕は「スイート&ビター」な3日間だった。

 「去年の初日は『クルマ、動くかな?』という感じで、タイムなんか見る必要もなかったけど、今年は最初から『レースしてるな』という気分でした」

 金曜日に新車SA07のロールアウトを終えた佐藤琢磨は、じゅうぶんな手応えを感じていた。まったく初めて動かした新車が、13位のタイムを記録したのだ。新チームメイトのアンソニー・デイビッドソンも11位におり、SA07の高い潜在能力が証明された初日だった。

 土曜日、琢磨はSA07の速さをさらに加速させた。小雨のパラつく午前中は8位(デイビッドソン4位!)。そして迎えた午後の予選。第一次予選(Q1)は12位でなんなくQ2に進出。さらに16人によるタイム争いで琢磨は10位のタイムをマーク。なんとQ3のステージに出て行ったのだ。Q3の結果は予選10位。昨年はずっとQ1の6台の足切り組の中に居続けたことを思うと、夢のようである。

 「午前中のセッションはクルマのフィーリングがよくなかったので、予選はセットアップを変えてクルマを抑え込むようにして思い切って行くしかなかった。Q2には行けるだろうと思ってましたが、Q3のことは考えてはいたけど行けるという予想はなかった。予選中は集中していたし、Q3に行くまではアッと言う間。Q3に出て行く時にピットロードに並んだ時は、去年までTVでしか見てなかったから不思議な気持ちになりました」

 感極まったメカニック達に肩車の祝福を受けた後、琢磨は日本人メディアに囲まれてレーシングスーツのまま淡々と一日を振り返った。そして決勝に向けては「グリッドど真ん中からのスタートなので、アクシデントに気をつけたい」と口元を引き締める。

 決勝はいつもながらいいスタートでトヨタ勢と抜きつ抜かれつのオープニングラップで、10位確保。その後もよくトヨタ勢について行った。しかし、1回目のピットストップで12位に後退。2回目のピットストップ直後にはバリチェロに抜かれ、1周遅れの12位でフィニッシュ。1回目ピットストップでわずかな給油作業ミスがあり、2回目には右後輪の着脱に手間取って数秒をロス。

 そのピットロスも痛かったが、苦しんだのはタイヤ。琢磨は「前輪にグレイニング(めくれ摩耗)が出てフロントが入らなくなったし、後輪もグレイニングでトラクションがかからなくなった。それがピットストップのたびに出た」と、敗因を語る。新車試走がオフテスト中にできなかった“ツケ”がレースで出た、ということだろう。

 「昨年最終戦のフィニッシュ順位の10位からスタートできるとは思わなかったから、それは嬉しい。でもトップ10フィニッシュが目標だったから残念。もう完走だけでは満足できない。予選ポジションから下がってはいけない……」

 3週間後のマレーシアは「決勝のレースペースに重点を置きたい」と佐藤琢磨。待ちに待った“戦える”シーズンが始まった。

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