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垣間見えたキャプテンの本音。 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2009/01/09 00:00

垣間見えたキャプテンの本音。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 ウインターブレークに入ったこの時期、各チームとも極寒のドイツを避けて温暖な土地で後半戦に向けたキャンプを張っている。バイエルンは例年通り中東のドバイで、ブレーメンやケルンは馴染みのあるトルコで、コットブスのキプロスという珍しいケースもあるが、主流はやはりスペインとポルトガルだ。全体の3分の2に当たる12チームがイベリア半島にベースを構えている。期間はどこも10日前後である。

 12月中旬から1月下旬まで臨時休業となるブンデスリーガではあるが、これで困っているのがスポーツマスコミだ。大型移籍が乏しく、クリスマス休暇でノンビリムードに浸るなど、見事なまでに緊張感が緩む条件が揃っているため、読者の関心を引く“目玉企画”作りに追われるのだ。

 知り合いの記者から聞いた話だと、

 「キャンプ地からの試合レポートはどうだ?」(デスク)

 「相手は地元のアマチュアですよ。それじゃ、泡の抜けたビールみたいなものです。誰も読みやしませんよ」(記者)

 「じゃあ、選手のインタビューはどうかな?」(デスク)

 「俺たちにも休みを取らせてください!(怒)」(記者)

 となるなど、担当者も相当に頭を悩ませるそうだ。

 そこで救いとなるのが、選手をああだ、こうだと論評しながら仕立て上げるランキング企画である。専門誌『キッカー』が発表する恒例の「ポジション別ランキング」がまさにこれ。

 統計とかランキングとか聞くと、さぞかし厳密な裏付けを取り、データを集計しながら科学的に…と、大学の授業みたいなことを連想するところだが、実際はそれほど大げさなものじゃない。編集部で会議を開き、現場の記者の意見を集約しながら、ワールドクラス、インターナショナルレベル、及第点、今後期待できそう、の4つのカテゴリーに分けるだけである。私が面白いと思うのは、このランキングが1回限りの特別大企画ではなく、ポジションごとに、それもGK、 DF、MF、FWの4つではなく、DFセンター、右DF、左DF、攻撃的ウインガー、守備的MF、トップ下などと細かく区切っている点だ。ここらへん、かなりの手の凝りようだが、内実は記者に休暇を与え、連載を長持ちさせる工夫でもある。

 これに対し、ライバル誌の『スポーツビルト』の企画は秀逸だった。18チームのキャプテンにアンケート調査を実施したのである。その質問が興味をそそる。

 「ドイツ人最高のFWは?」「2010年W杯では誰が代表GKに相応しい?」「前半戦のMVPは?」などは常識の範囲内。面白いのはこの先の質問だ。「最も失望させられた選手と監督は?」「前半戦、PKを取るため最高の演技をした選手は?」のなんと辛辣なことか。ちなみに答えで多かったのは、シュツットガルトのフェー監督が8票、シャルケのエンヘラールが7票、そして演技賞はHSVのヤロリームが14票で圧倒的な“支持”を集めた。

 真面目な質問も多かった。ハーフタイム20分制、戻りオフサイドの撤廃、試合時間の正味60分制、ビデオ判定、主審2人制、引き分けの廃止などには、賛否両論が渦巻いた。また「どこが優勝するか?」では16人がバイエルン・ミュンヘンの名前を挙げた。「そんなのは、ウチのチームに決まってるぜ」などと妄言に溺れず、自らの力が及ばない点を素直に認めている。プロでありながら、建前ではなく本音を出しているのだ。天晴れである。

 両誌ともこうして知恵を絞り出しているわけだが、読者がいちばん気になるのは何といっても「年間最優秀選手は誰か?」である。キッカーがリベリーを推しているのに対し、スポーツビルトでは「リーグ前半戦で」の但し書きをつけながらも、18人中13人がイビセビッチを選んでいる。リベリーの名を挙げたのは 5人だった。記者の目と、ピッチに立ち直接対決するキャプテンが選ぶのでは判断基準は違うところだが、ゴール数が18対6では、どうしたってイビセビッチのほうが目立つというものだ。伝説のストライカー、ゲルト・ミュラーは「このままいけば、イビセビッチは年間40点取るかもしれない」と予想する。チャンピオンズリーグにもUEFAカップにも出場せず、リーグ戦だけで40を取るのは驚異的だ。統計にしてもアンケートにしても、こうして角度を変えれば面白い記事に仕上がるのである。

 さて、ここで提案を。シーズンが終了したら、また同じ企画をお願いしたい。半年前の結果と比較してほしいのだ。バイエルンが優勝できなかったら、それこそ16人の目は節穴となって予想の難しさを再認識できるし、また不名誉な評価を得た監督と選手にとっても後半戦の頑張り次第では名誉回復のチャンスになる。マスコミの責任としてもやってもらえないだろうか。6~7月だって冬に負けないほどネタが枯れるのだし。

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