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ロベルト・バッジョ
――不滅のチャンピオン。 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

PROFILE

photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT

posted2004/05/07 00:00

ロベルト・バッジョ――不滅のチャンピオン。<Number Web> photograph by Enrico Calderoni/AFLO SPORT

 待ちに待った4月28日、イタリア全土が大きく揺れた。FWロベルト・バッジョ(ブレーシャ)が5年ぶりに代表のユニフォームに袖を通した、注目のスペイン戦。'90年代に「不動のセカンドストライカー」として活躍したバッジョが、ルイジ・フェラリススタジアムに背番号「10」をつけて登場すると、どのスタジアムでもブーイングを浴びることがないイタリアのカリスマは、3万人を超える観衆の大歓声に迎えられた。そして国民は、過去のワールドカップを思い出すかのように、「至宝」のプレーに酔いしれた。

 世界中のサッカー選手が夢見るワールドカップの舞台を3度も経験したバッジョの体の中をかつてない興奮が突き抜ける。最初にして最後になるであろうキャプテンマーク。気迫で勝負する不滅のチャンピオンは、トレードマークであるポニーテールを振り乱しながら、87分間に亘ってピッチを駆け巡った。

 現在のイタリア代表は「トッティあってのアズーリ」と言われ、ローマの天才トレクアルティスタ(司令塔)を中心に構成される。ゆえにトッティ不在の場合は、その攻撃は常に不安視される。しかしトッティに代わってバッジョが入ったスペイン戦では、そうした評価が必ずしも正しいわけではないことが立証された。

 バッジョの「芸術」がスペインの守備陣を一瞬にしてパニックに陥れ、相手の反撃を封じ込める。今季限りで現役を引退するベテランの底力に刺激を受けたのか、チームメイトも闘志を掻き立てられた。「バッジョがいてこそのイタリア」、そんな雰囲気がスタジアムを覆った。

 バッジョの偉大さを再認識させたこの夜。「膝に爆弾を抱えながらも全力を尽くしてくれた」と、トラパットーニ監督もバッジョを称えた。

 マスコミはバッジョの完璧なまでのプレーを「凱旋将軍」と称賛、国民も「バッジョはポルトガルへ、デルピエロはスタンド席へ」と、バッジョの欧州選手権出場に期待を募らせる。また、イタリア各紙は、過去にバッジョが得点した試合で負けたことがない点を強調し、「コディーノ(バッジョの愛称)」がゴールを決めればイタリアは負けない」と指揮官をあおった。

 2002年ワールドカップのメンバーから外された屈辱を払拭するため、今回の復帰戦は、バッジョにとって、ある意味でサッカー人生を賭けたトラパットーニへの「リベンジ」だった。久し振りだった代表の感触も、持てる力をすべて出すことで確かめ、ある程度は成果を残せたと実感できただろう。

「この試合が欧州選手権出場へのきっかけになるなら嬉しいし、呼ばれれば出る」とバッジョは招集を受ける決意を表明した。FW勢のポルトガルへの椅子は6つ。エースストライカーのビエリ(インテル)、及びトッティ、カッサーノ(ローマ)の招集は確実。従って残された3つの座をデルピエロ(ユベントス)、コラーディ(ラツィオ)、インザーギ(ミラン)、ディバイオ(ユベントス)、ミッコリ(ユベントス)、そしてバッジョで争う。

 イタリアにとって因縁の欧州選手権だけに、トラパットーニとしては、メンバーの選出に神経過敏になる。それ以上にバッジョが新たなプレッシャーをかけたことで、選考レースはふりだしに戻ったといえるかもしれない。

「プロである以上精一杯戦う」と、すんなり「負け」を認めないバッジョの一言に、国民の期待はますます高まるばかりである。

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