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ファンタジスタはどこへ行く。 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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posted2005/08/24 00:00

ファンタジスタはどこへ行く。<Number Web> photograph by AFLO

 ファンタジスタ──。ワンプレーで試合のリズムを変えられるウィットな動きに富むジョカトーレを指す。

 限られたスペースで多彩な攻撃を要求されるだけに、欧州の中でも堅守のセリエAで、ファンタジスタへのプレッシャーが特にキツいのは納得できる。しかし最近、イタリアでファンタジスタ離れが生じていることに釈然としないのは、私だけではあるまい。

 実際まだ開幕していないセリエAを、「マンネリ化」、「見せ場がない」との評価を下すのは早計かもしれないが、ジダンが、シニョーリが、そして俊輔までもがセリエAから旅立っていった。イタリア国内の「見せるプレー」の過小評価が、セリエAへの期待感を低下させているのは事実だ。

 そもそもファンタジスタの激減は、システムの一様性に始まった。今日のイタリアサッカーは、攻守ともにリスクの少ない4−4−2のシステムに重点を置いている。このシステムでの中盤の選手は非凡な能力よりもスピード、そして何より、過密日程から持久力がおおいに必要とされている。

 90年代、ファンタジスタを操り、数々のタイトルを総ナメにしてきた名将カペッロでさえ、ファンタジスタを生かす攻撃システムにはチャレンジしなくなった。カペッロは言う。「最近のサッカーは速攻だ。手間ひまかければいとも簡単に相手にボールを奪われてしまう」

 タイトル獲得を目指す監督たちは、テンポの速さが主流のセリエAで、不安定さが露呈しかねない3トップを敬遠するようになった。あのロベルト・バッジョでさえ、起用法を巡り、当時のミラン、インテル、ボローニャの指揮官を悩ませたものだった。

 ファンタジスタの全盛期であった80年代、90年代初頭のサッカーは、スピードもいまほどでなかったために、たとえファンタジスタが決定機につながるプレーを生み出すのに4秒かかったとしても致命傷にはならなかった。プラティニ、マラドーナ、ジーコなどの責務は、攻撃の展開であったために、守備ラインまで下がる必要はなかったものだった。

 最近のシステムがファンタジスタに適応しなくなったことで、そもそも非凡な能力を持つ足の魔術師が控え選手に甘んじているケースが増えている。昨シーズン、ルイコスタ(ミラン)、コッツァ(ジェノア)が完全にベンチ要員であったように、今シーズンもザウリ(サンプドリア)、モルフェオ(インテル)が控え組になりそうだ。

 観客をあっといわせる攻撃を演出し、ユベントスで確固たる地位を築き上げたFWデルピエロが、カペッロ采配で窮地に立たされていることはいうまでもない。プレシーズンマッチでも、ベンチをあたためてることの多いユベントスのファンタジスタは、開幕スタメンの危機も噂されている。

 渦中の人、デルピエロに、元ユベントス監督で、現在ACミランのアンチェロッティ監督がラブコールを贈ったことが話題となった。「彼のように優秀で、人徳のある選手をもう一度指導したい。デルピエロのために、ミランは開放している」

 デルピエロのミラン入り説は一気に加速したものの、“ロッソ・ネーロ“の豪華FW勢をライバルに、果たして新たな挑戦をするつもりはあるのだろうか?デルピエロのハングリー精神と器の大きさが試されることになる。

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