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Vol.6 木村沙織 中心選手の自覚 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2007/12/11 00:00

Vol.6 木村沙織 中心選手の自覚<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 ワールドカップが閉幕してから約1カ月。来年5月の北京五輪アジア兼最終予選で今度こそ五輪出場権の獲得を狙う全日本選手たちは、それぞれの課題や決意を胸に、新しいスタートを切った。

 12月8日、V・プレミアリーグが開幕。木村沙織は、ワールドカップでできなかったことを、このVリーグでやろうとしている。

 「ワールドカップでは、“個人個人”になってしまったことがすごく多かったと思うんです。誰かがいいプレーをしても、全員で喜んでいないというか……。気持ちでは喜んでいても、やっぱりそれを表に出さないと周りもわかってくれないし、その人自身もわからないと思う。日本は、きれいにバレーをしてちゃ絶対勝てないと思うんです」

 木村の所属する東レは、新外国人のデラクルス(ドミニカ)がナショナルチームに参加のため来日しておらず、苦しいスタートが予想されたが、地元・滋賀のホームゲームでの2連戦に、共にストレートで連勝した。特に2戦目は、セルビア代表のニコリッチが加入した昨年4位の武富士に(東レは昨年6位)、今年強化してきたディフェンスの粘りとチームの一体感を武器に、快勝した。

 その試合で、木村は45.7%という高い決定率を残し、チーム最多の18得点を挙げた。何よりこの2日間、バレーをするのが楽しくて仕方がないという雰囲気で、得点のたびに跳び上がって喜び、コートの中を全開の笑顔で走り回った。

 ワールドカップを戦い終えた全日本選手は、少しばかりの休息を挟んで、所属チームに合流したばかりだ。当然コンディションやセッターとのコンビ、守備面の連携は万全とは言えない。そして何より、モチベーションの問題がある。北京五輪出場権の獲得を目指して戦ったワールドカップから、Vリーグ優勝という別の目標に頭を切り替えなくてはならない。また、ワールドカップで体感した世界トップと比べれば、レベルの違いも感じざるを得ない。100%のモチベーションでVリーグに臨むのは難しい。

 しかし今の木村は、プレーも気持ちも充実している。

 「一つのボールが決まったら、みんなでガーッと喜んだり、それはプレーの問題じゃなく、やろうと思えばできること。そこを変えただけで、1点が2点3点になったりするし、相手に流れが行きそうな時にぐっと我慢することもできる。そういうのがすごく大事なんだとわかりました」

 不本意に終わったワールドカップの一番の課題がチームの姿勢にあるととらえ、それを何とかしようとする姿からは、中心選手となった21歳の自覚が伝わってくる。

 184cmの高さがあり、サーブレシーブもこなす。相手のブロックやコートの状況を見て、とっさの判断で手首や体をひねり、予測不可能なコースにスパイクを打ち込んだりもする。器用、という一言では表せない。その細身の体には、バレーセンスが詰まっている。

 2003年に、高校2年・17歳で全日本にデビューした。その年のワールドカップでは、2歳年上の栗原恵、大山加奈と共に、10代トリオとして注目を集めた。ほんわかした独特の雰囲気と天真爛漫な笑顔は、4年経った今も変わっていないように見える。しかし、その胸の内は大きく違っている。

 2003年以来、今年4年ぶりに共に国際大会を戦ったリベロの佐野優子は、木村の変化を感じていた。

 「前は、若くて怖いもの知らずで、思い切りやっていた感じだった。それから3年の間に、全日本で、プレッシャーだとか、いろいろなことを経験したのか……。今は迷いとか、苦しんでいる部分もありつつ、でもそれを見せないようにしているんじゃないでしょうか」

 アテネ五輪の後、栗原や大山は怪我などで全日本を離れたが、木村はずっと全日本にいた。この3年間、最も多くコートに立ったサイドアタッカーだ。それだけに、多くのものを背負ってきた。

 「以前は思い切ってやればいい、ということだけ言われていて、大事な大会だということも、何もわからずにやっていました。でも、ずっと全日本に選ばれて、試合に出ているうちに、日の丸を背負う重みだとか、責任感をすごく感じるようになりました」

 サーブレシーブを狙われたり、高いブロックに跳ね返されたり、世界の壁を感じながらもコートに立ち続けてきた。今年のワールドカップでも、11戦全試合にフル出場した。

 「世界を相手にしたら、思い切りやるだけじゃ通用しないから、頭を使ってやるプレーも必要だし、その上にムード作りも大事。やることがいっぱいですね」と苦笑する。

 それだけ木村には伸びしろがあるということだ。それは当然、日本の伸びしろでもある。

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