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ヒディンク神話、ふたたび。 

text by

浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2008/06/26 00:00

ヒディンク神話、ふたたび。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 ユーロがヨーロッパチャンピオンを決める大会であることは、いまさら言うまでもないが、それを取材する側の人間は、世界中から数多く集まってくる。かく言う私も、ヨーロッパ外からやってきているひとりである。

 なかでも、やたらとその姿を目にするが、中国、タイからの取材陣。現在、アジアにおけるヨーロッパ・サッカーの人気は非常に高く、それが数にも表れているというわけだ。

 日本はというと、何人かの外国人記者に、「2年前のワールドカップや前回のユーロに比べて、日本人の記者が少ないね」と不思議がられた。ワールドカップ予選と重なったこともあってか、その人数は控えめだ。

 そんな日本以上に目立たないのが、お隣の韓国である。ワールドカップでの取材の様子などを見ていても、日本や中国に比べ、自国以外の試合にあまり関心がない、というのが韓国取材陣の特徴。そのあたりのお国柄が、人数にも反映されている。

 ところが、そんな韓国人記者の数が突如として増える試合がある。それが韓国の英雄、ヒディンク率いるロシアの試合なのだ。

 韓国のスポーツ紙で通信員を務めているロンドン在住の記者と、たまたま移動の列車に乗り合わせ、話をしたところによれば、韓国における今大会の興味は、「1位ヒディンク、2位クリスティアーノ・ロナウド、3位マンチェスター・ユナイテッドの選手全般」とのことだった。

 3位はどういうことかと尋ねたら、「朴智星の友達だから(笑)」。要するに、それ以下はたいした興味じゃないということだ。

 彼は韓国のサッカー報道を「あらゆるメディアの論調がひとつにまとまって加熱してしまいがち」と語っていただけに、ややシニカルな部分が強調されている点は否めない。

 とはいえ、実際に韓国人記者の増減を見ていれば、ロシア戦が最大の関心事であることはすぐに気がつく。目の前のロシアの快進撃に、恐らく2002年ワールドカップを重ね合わせてヒディンクを称え、我がことのように喜んでいるに違いない。

 ただし、ヒディンクに心酔しているのは、もはや韓国人だけではなさそうだ。

 準々決勝オランダ戦のハーフタイム、スタンド最前列の記者席に陣取ったロシア人記者が盛んにカメラを向けていたのは、今大会話題のアルシャビンら、選手たちではなく、ロッカーからベンチに戻ってきた指揮官だった。

 ヒディンクはすでに、ロシア人のハートもがっちりとつかんで離さない。この先の結果いかんでは、歴史的英雄になってしまう可能性さえありそうだ。

フース・ヒディンク

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