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アジアカップ予選A組 VS.イエメン 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byTamon Matsuzono

posted2006/08/18 00:00

アジアカップ予選A組 VS.イエメン<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 プレーや意識を変えるのは難しい。完全に自分のものにするのはもっと大変なことだ。

 8月16日、日本はアジアカップ予選第2戦でイエメンと対戦し、後半セットプレーから2得点をあげて2−0で勝利を収め、得失点差ながらも予選A組首位をキープした。

 13日に新潟入りして以来、日本代表はさまざまなメニューでプレーに緩急をつけてボールを前線へ送り、攻撃を仕掛ける練習を繰り返していた。それに加えて、試合の前日練習では、サイドを使って攻めることにも取り組んでいた。

 だが、試合では練習の成果を見せることはほとんどなかった。

 特に前半は、バランスよく陣形を保って守備を固めるイエメンを前に、バックラインでボールを回すシーンが目立った。新潟スタジアム全体を包み込むような湿度の高い暑さのせいか、2トップの巻、田中達也、1列後ろの三都主と遠藤らに動きが少なく、後ろからボールを出しづらい。

 しかも、最終ラインでのボール回しは、オシム監督が「駅の多い各駅停車のよう」と指摘した、ゆっくりペース。パスを回す方向もテンポも一定で、相手の不意をついて釣り出すことも出来ない。そこだけみていると、歴代の日本代表チームとなにも変わらないように見える。監督が変わり、選手が変わっても変えられない、日本サッカーの悪しき風習として染み付いているものがあるのかと思うほどだ。

 さらに、ゴール前に立ち並ぶ相手に対して、中央からの崩しでなく、サイド攻撃を試みようという頭の切り替えもできなかった。そこまでの視野の広さと考えの柔軟さは、身についていないということだろう。

 それも、しかし、後半から送り込まれたMF羽生の登場で様子が変わる。

 ベンチで前半を見ていた羽生は、「自分が後半から入るのは、チームの動きとリズムが悪いからだろう」と判断したという。積極的に相手の裏やサイドに流れて、チーム全体に動きをもたらした。

 「良くもなく悪くもない。平凡なもの」と指揮官の羽生への評価はそっけない。だが、監督の指示がなくても自分に求められたものを読み取り、実行したジェフ監督時代の教え子の行動は、歩き出したばかりの日本代表チームに勝利をもたらし、やるべきことを示していた。

 後半24分、羽生はドリブルで持ち上がるとペナルティエリアの右からシュートを放ち、CKのチャンスを得た。MF三都主が蹴ったCKを、相手ディフェンスの間をすり抜けてニアへ飛び出したMF阿部がヘディングでゴールに叩き込んだ。

 その後、オシム監督は千葉MF佐藤勇人を投入。指揮官の求めるものを体現できる選手の助けを得て、チームは動きと流れを維持した。

 試合終了直前のロスタイムには、三都主のFKに佐藤寿人がヘディングで合わせ、一度はGKにブロックされるが、リバウンドに鋭く反応してチーム2点目を決めた。

 チームがスタートして1週間ほどで迎えた初の公式戦での勝利は、新任監督にとってもうれしいものだったに違いない。

 だが、セットプレーによる2得点は、いずれもCK12本、FK15本のうちの各1本から生まれたもの。セットプレーを得るまでのプレーは評価しても、これだけ多くの“チャンス”を外せば、指揮官の渋面は当然だろう。

 「キッカーが打ち合わせと違う蹴り方をした。日本人選手の技術を考えれば、5本に1本ぐらい決めていなくては」と、オシム監督は言った。

 試合の展開を睨んで、攻めのアイディアを出し、実践する。ただし、自由にアレンジしてよい部分とそうでない部分を見分けることも必要になる。そして、考えるプレーを予定通りにことを運べる技術も、また、磨いていかなくてはならない。

 新生日本代表がスタートして日は浅い。早急にチームがよくなることなどあり得ない。問題は、いかに歩みを進めるかだろう。1試合ごとに手にするプラスとマイナスに、各選手がどう捉え、どう対処するかだろう。代表チームが次へ進むには、クラブに戻ってからの日々の時間と意識の持ち方が重要な要素になることは間違いない。

 彼らがやるべきことは多い。

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