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ACミランに勝てる根拠が10もあったというのに 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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posted2006/03/15 00:00

ACミランに勝てる根拠が10もあったというのに<Number Web> photograph by AFLO

 リーグ戦ではハンブルガーSVに土壇場でゴールを許し、開場以来のホーム不敗神話がストップしてしまった。続くチャンピオンズリーグ第2戦ではACミランに1−4と記録的な惨敗を喫し、国内と欧州のレベル差に愕然とさせられた。バイエルン・ミュンヘンがいま、不調のどん底にある。

 前夜、ミュンヘンの地元紙は「ブレーメンGKの凡ミスを見たか?あんなこと、バイエルンじゃ絶対にありえない」と、堅い守備を誇りセリエAで独走するユーベ相手にブレーメンが計4点も奪った事実を忘れ、ドイツ王者の底力を見せ付けてやるぞとばかり、次から次へと楽観的な予想記事を出していた。

 A紙は「それでもバイエルンが勝つ理由」と題し、「プレーのレベル、精神的な強さ、卓越した戦術、ガットゥーソの欠場、バラックの存在」など、勝手気ままに10項目の根拠を紹介した。どれもこれも、「こうなったらいいのにな…」ではなく、ほとんど「こうであるから勝てるのだ!」と、まさに太鼓持ちが囃し立てる“よいしょ記事”のオンパレード。

 ライバルのB紙も負けてはいない。主力選手8人とアンチェロッティ監督のコメントやプレーを紹介しつつも、見出しはやはり「さぁ、これで次に進もうぜ」だ。相手の真の実力を正当に評価することをせず、国内だけでしか通用しない物差しで計るから、こんなヘンテコリンな記事が生まれるのだ。こら、ドイツの番記者どもよ、少しは勉強せんかい!

 カタルーニャで繰り広げられた夢のようなフットボールに世界中の誰もが共感と憧れを抱いたのに対し、実直で計算づくで意外性のないフースバルを展開するバイエルンにいったいどれほどのファンが好意を持っただろうか。持ち味である最後の粘りもまったくないままでは、応援する人の数は減るばかりだろう。

 結局、10項目はどれもこれも大ハズレだった。これが分かっただけでも読者は1つ利口になったかもしれない。だいたい、楽観予想なんて当たったためしがない。「W杯は地元ドイツが優勝する」と宣言している人もいるが、こちらも当てにならない。イタリア相手に代表でもクラブでも3連敗でまったくいいとこなしなんだから。まさか、「W杯で勝つ10の条件」なんて記事は出てこないだろうな。

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