バスケット日本代表 世界での戦いBACK NUMBER

『ビッグイヤー』が始まった 

text by

小尾慶一

小尾慶一Keiichi Obi

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photograph byKeisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO

posted2006/06/13 14:29

『ビッグイヤー』が始まった<Number Web> photograph by Keisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO

 W杯で盛り上がる、日本のスポーツ界。そんな今、バスケット日本代表の現状を把握している人の数は、そう多くないはずだ。まずは、基礎知識からおさえていこう。

 代表チームについて、キーワードを3つ挙げてみた。

a) 田臥勇太はいない

b) ヘッドコーチは熱血クロアチア人。チームには有望な若手選手が大勢いる

c) 目標は、8/19~9/13に日本で行なわれる世界選手権

 田臥の辞退については、すでに多くの報道がなされている。ごく単純に言ってしまえば、「NBAを目指すこと」と「日本代表としての活動」の両立が難しかったのだ。

 なぜ難しいか、という問いに答えるには、代表の方針について説明する必要がある。

 ヘッドコーチのジェリコ・パブリセビッチは、バスケット強豪国クロアチアの出身。今年で就任4年目を迎えるが、世界に通用するチームを目指して、早くからロースターの大型化・若返りに着手していた。スピードスターの五十嵐(26)、運動能力に優れたコンボガードの桜井(23)、205cmの双子フォワード、竹内譲次・公輔兄弟(共に21)、天性のシュート力を持つ川村(20)など、若手を多く抜擢し、この数年間ほぼ同じメンバーで練習を積ねてきた(*括弧内は年齢)。

 ジェリコ・ジャパンの特徴は、その練習量だ。1ヵ月に及ぶ欧州遠征を含め、半年間で10回もの強化合宿。しかも、練習密度は非常に高く、フィジカル強化に関しては容赦がない。体力抜群の某選手をして、「スケジュールを見ただけで気持ちが悪くなる」と言わしめる過酷さ。ジェリコが求めているのは、そうした練習に進んで参加できる選手である。

 一方の田臥は、7月のNBAサマーリーグに備え、6月中に渡米して準備を進めなければならない。これがちょうど、ジェリコが最重要視している欧州遠征の時期に当たる。また、仮に欧州遠征に参加しなくてもOKだとしよう。その場合も、別の問題が発生する。代表にはすでに五十嵐という司令塔がいて、ここ数年でチームとしてのまとまりを見せ始めている。ベテランの節政(34)やフィジカルに強い柏木(24)など、控え層も充実。田臥といえども、中途半端な合宿参加で出場時間を得る保証はどこにもないのだ。こうした事情を考えると、参加辞退は驚くべきことではない。

 「僕の分も、がんばってほしい」とエールを送られた代表チームは、6月4日、クロアチアへ向けて出発した。1ヶ月に及ぶ、“地獄”の欧州遠征のはじまりである。参加選手は、16名。昨年のメンバーである川村、桜井、五十嵐、竹内兄弟、山田(24)、古田(34)、柏木、網野(25)、伊藤(26)に加え、今季から、ベテランの折茂(36)と節政、そして、若手の齋藤(25)、朝山(25)、大西(23)、佐藤(22)が加わった。「欧州遠征前に最初のふるい分けを行なう」「練習にベストな人数は16人」とジェリコが言い続けてきたことを考えると、最終メンバー12名がこの中から選ばれるのは間違いないだろう。

 「選手のコンディションは、今、ゼロより下のレベルです」成田空港の待合室で、ジェリコはそう語った。「練習の負荷による、ダウンフェイズと呼ばれる状態。これを8月にむけて上り坂に持っていき、絶好調で世界選手権を迎えます。それがすべてです。われわれにとって、夏がすべてなんです」

 代表候補者の辞退、それによる追加選考。ビッグイヤーにしては、実にばたばたとした立ち上がりである。だが、そうした騒ぎに惑わされることなく、彼らの目は世界選手権を見つめているのだ。

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