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プロになったハニカミ王子。 石川遼 

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

PROFILE

photograph byShigeru Tanaka

posted2008/01/22 00:00

プロになったハニカミ王子。 石川遼<Number Web> photograph by Shigeru Tanaka

 石川遼が1月10日にプロ転向宣言をした。

 彼は去年5月のマンシングウェアオープンKBSカップにアマチュアで優勝して、'09年までのツアー出場資格を得たが、高校を卒業するまで待っていたら、その資格を失ってしまう。それでプロ転向宣言をしたらしいのだが、16歳3カ月でのツアープロは史上最年少だそうだ。

 その若さでプロになることを不安視する向きもあるが、ぼくはこれでよかったと思っている。

 ゴルフには厳格なアマチュア規則がある。それによれば、アマチュアは「規則2」でつぎのことを禁じられている。

 「プロフェッショナルになる目的のためにする行動は一切行ってはならない」

 これを文字どおりに解釈すれば、アマチュアはプロになりたいと口にしてはならないことになる。すると練習をすることさえプロになる目的のためにしていることになるからだ。このごろはこの規則も甘くなり、将来はプロになりたいといったぐらいでは何の咎めも受けないが、ジャック・ニクラウスは彼がプロに転向した1961年当時は、アマチュアがプロ転向を少しでも考えていると口外しようものなら、その時点で全米ゴルフ協会はアマチュアとしての資格を剥奪していたと自伝にしるしている。

 むろん、ゴルフ用具メーカーから金品を受け取ることもできない。しかし、これからはそういう面倒な規則からまったく自由になるのである。

 また、石川は5月の優勝以後、日本オープンも含めてプロトーナメントに7試合出場したが、出場する試合が決まると、2週間前から何度も開催コースを訪れて練習ラウンドをおこなっていたのだそうだ。これにはかなりの費用がかかったのだろう。

 三井住友VISA太平洋マスターズの太平洋クラブ御殿場コースや、日本シリーズJTカップの東京よみうりカントリーなどはぼくも知っているが、1ラウンドして食事をすると、平日で約3万円、週末だと4万円かかる。そこで何度も練習したうえに、試合でもプレー代を払わなければならなかったのである。さらに、ダンロップ・フェニックスなどは宮崎県でおこなわれたから、旅費と宿泊費も必要だったろう。

 ミシェル・ウィーが高校生でプロ転向したのは、やはり15歳のころからプロのトーナメントに出ていて、アメリカのマスコミからその費用はどうやってまかなっているのかと疑われたことが理由のひとつだときいたことがある。石川もアマチュアのままでいたなら、今年は去年以上にトーナメントのスポンサーから招待の要請を受けていたはずだから、同じような声が出たかもしれない。

 これからはそういう費用の負担や雑音からも解放される。産経新聞によれば、ゴルフ用具メーカーとの契約は5年10億円といわれているそうだからだ。

 あとはミシェル・ウィーのようにならないことを祈るばかりだ。彼女もプロ転向してタイガー・ウッズと同じ用具メーカーと巨額のスポンサー契約を結んだが、その後は、男子プロにも比肩しうるといわれたアマチュア時代の豪打はすっかり影をひそめて、いまはニュースになることもほとんどない。彼女に何が起きたのか分からないが、とつぜんその才能を見失うということは、ゴルファーにかぎらず、気をつけていないと誰にでも起こることなのである。

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