佐藤琢磨・中嶋一貴 日本人ドライバーの戦いBACK NUMBER

苦戦続きのヨーロッパ・ラウンド。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2008/08/18 00:00

苦戦続きのヨーロッパ・ラウンド。<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 真夏のヨーロッパ・ラウンドで、中嶋一貴が苦戦を続けている。

 結果がすべてではないにせよ、第10戦ドイツ14位(予選16位)、第11戦ハンガリー13位(予選17位)と、得点はおろかトップ10にもからめなかった。レース中にメカニカル・トラブルが起きたわけでもないし、致命的スピンをしでかしたわけでもない。ドイツ、ハンガリー、いずれもしっかりチェッカーを受けての結果。実はこういうパターンがいちばん厭な流れで、速いが壊れるといったケースより性質が悪いのだ。

 ドイツ(ホッケンハイム)は、予選でまた「もったいなかった……」のコメント。アタックラップのセクター1、2はチームメイトのロズベルグに遜色ないタイムでクリアしながら、低速セクションが続くセクター3でタイムロス。わずか100分の9秒差でQ2進出を逃した一貴は「セクター3はトラック・コンディションが良くなっていたのに攻め切れなかった」と、走りがコンサバティブになっていたことを告白した。失敗するリスクがもちろんあるにせよ、F1“レーサー”としてはやや煮え切らない印象を受ける発言であり、アプローチでもあった。シュアな走りで定評ある一貴だが、あまりに慎重すぎるのもいかがなものか。ロズベルグは9位でQ2進出を決めている。

 決勝のオープニングラップでは、スタート後ほどなくロズベルグの真後ろまで急接近。ここで「リスクを負いたくなかった」とアタックを遠慮した一貴は、その後のコーナーで、後方のバリチェロに抜かれてしまう。コーナーでロズベルグがもたつき、そのあおりを食らった隙をベテランに衝かれたのだった。その後は単独スピンも喫したが、完走。

 しかし、バトルらしいバトルはオープニングラップだけだったと言ってもよい。

 「ハンガリーはボクらのクルマに向いていると思いますから」と乗り込んだ次戦ハンガロリンクは、しかし、取らぬ狸の皮算用に終わった。ウィリアムズはモナコ、カナダ、そしてここハンガリーのような、滑りやすい路面の低速サーキットに強いと定評がある。一貴が期待したのも当然といえば当然だが、いざ予選に臨むと最初のQ3で敗退。いいセッティングが見つからず、マシンのバランスがうまく取れなかったのが原因だった。加えて最後のアタックラップに出て行った周、後ろからライコネンが接近。チャンピオンを邪魔してはえらいことになるから、ひっかからないように逃げる。タイヤが予定よりも速いペースによってオーバーヒート気味になり「アンダーステアが出てしまいました」と、一貴は唇を噛んだ。

 決勝は1回ストップ作戦を敢行。しかし2回ストップの上位陣を“喰う”ほど有効な戦略とはならず、13位チェッカーとなった。

 「ハンガリーは最も体力的にキツいサーキットだと思います。そこを走り切ったんですから、自信にはなりました」と、レース後の一貴。

 実は苦戦を続けているのは一貴ばかりではない。ロズベルグはモナコから6レース連続ノーポイント。つまりウィリアムズ・トヨタ・チーム自体が苦戦の連続という事情もあるのだ。慢性的資金不足で開発のスピードが追いつかず、トップチームに置いていかれるいっぽう。そんな状況の中、次戦バレンシアまでの3週間がどのチームもテスト走行が禁止される期間となるのはわずかな慰めか。

 「日本に帰ってしっかり休みたいと思います」

 次戦バレンシアはF1グランプリ初開催のストリート・コース。誰も知らないバレンシアで、一貴に夏休み効果は顕われるだろうか。

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