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LAでカギを握る、ふたりの選手。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byYasushi Kikuchi

posted2004/07/29 00:00

LAでカギを握る、ふたりの選手。<Number Web> photograph by Yasushi Kikuchi

 シーズン後半戦がスタートした。ロサンゼルス地域を本拠とするドジャーズ、エンジェルスの2チームはそれぞれプレーオフを狙える好位置をキープ。以前に紹介したが、両チームのLA覇権争いが今後さらにヒートアップしそうだ。実はある地元紙が報じたのだが、エンジェルスのモレノ・オーナーがチーム名を創設当初の「ロサンゼルス・エンジェルス」に戻すことを画策しているらしい(実際、今季から遠征用ユニフォームの胸文字を「アナハイム」から「エンジェルス」に変更している)。筒井順慶ではないが、当面は両チームの動静を高みの見物していく楽しみができた。

 ところで、この2チームにそれぞれ所属している2人のベテラン日本人投手が、早期メジャー昇格を目指し、後半戦をスタートさせた。このコラムで紹介したこともある木田優夫投手と水尾嘉孝投手だ。

 木田投手はキャンプ期間中に腰のヘルニアを再発。開幕直後に手術を受け、ずっとリハビリを続けていた。昨年もキャンプ直前に不慮の交通事故に見舞われ初登板が5月だったが、今年はさらに遅れ、チーム合流は後半戦が始まるオールスター明けだった。

 「本当に長かったですよ。手術直後は6週間ぐらいで復帰できると言われていたんですから」

 フロリダでのリハビリ進行具合は、メニューを組む理学療法士(PT)の判断に委ねられていた。段階分けした1つのメニューをクリアしながらなかなか次に進んでくれない慎重なPTの姿勢に、何度となく不満を募らせたこともあった。キャッチボールが再開できてからは、練習メニューだけでは飽きたらず1人ネットに向かってボールを投げ続けた。その甲斐あってか、ルーキーリーグでのリハビリ登板はわずか2試合で、待望の3A合流を果たした。

 合流後3登板目で先発投手入り。球数も順調に増やし、ほぼ完調に近い状態まで戻った。後は登板を重ね、実戦の感を取り戻すだけ。昨年同様先発、リリーフができる貴重な戦力としてコールアップを待つしかない。

 一方の水尾投手は、開幕直前にエンジェルスと契約し、木田投手より一足早く3Aでメジャー昇格を目指していたのだが、こちらも予期せぬアクシデントが待ち受けていた。それは3Aの本拠地ユタ州ソルトレイクシティの地理的条件にあった。ロッキー山脈に囲まれた同市は標高1300mを超える高地。水尾投手の体質が対応しきれず、一種の高山病のような症状を起こしてしまったのだ。

 ソルトレイクでは普段でも頭痛や呼吸困難に襲われ、満足に投球できるような状態ではなかった。それを物語るように3Aでの投球成績は、遠征では3点台の防御率がソルトレイクでは10点を超えていた。いつまでも状況が改善されない水尾投手は、オールスター期間中にチームに事情を説明。そしてエンジェルスの判断で、後半戦から2Aのアーカンソー行きが決定した。

 3Aから2Aへの移行は一般的に“降格”という言葉が使われるが、今回のケースは水尾投手のための“応急措置”と考えるべきだろう。現在は改めて2Aからのメジャー昇格を目指している。

 「もう何ともないです。自分から練習できるようになりました。これからは1点もやらないつもりで投げていきます」

 気分一新で後半戦をスタートさせた水尾投手。現在エンジェルスは、ア・リーグ1位のチーム打率を誇りながら投手陣の崩壊で今ひとつ波に乗りきれていない。あとは水尾投手の出来がすべてを握っている。

 2人のメジャー昇格を報告できる日を待ちわびながら、今後も2チームの取材を続けていきたい。

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