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デコ「我がバルサの誇り」 

text by

中谷綾子・アレキサンダー

中谷綾子・アレキサンダーAyako Alexandra Nakaya

PROFILE

posted2005/07/07 00:00

SPECIAL FEATURES

[特別インタビュー]デコ「我がバルサの誇り」

中谷綾子・アレキサンダー=文

text by Ayako Alexandra Nakaya

 6シーズン振りにリーガエスパニョーラ制覇を果たしたFCバルセロナが来日した。メンバー表に、ロナウジーニョやエトー、プジョルといった主力の名はなかったが、それでもバルセロナらしい攻撃サッカーを存分に披露した。その中心となり、最も輝きを見せたのは、シーズン中のロナウジーニョのポジションを担ったデコだった。

──リーガ優勝、おめでとうございます。バルサ移籍1年目は、とても充実したシーズンでしたね。

 「ありがとう。確かに、移籍1年目にも拘らず、穏やかな1年が過ごせました。クラブ移籍の際に、多くの選手が公私のバランスを保つことに苦労する、と聞かされていましたから……。

 僕を温かく迎えてくれた周りのみなさんに、とても感謝しています。でも、生活環境が変化したこともあって、家族は僕以上に苦労したと思う。僕がピッチで結果を残すことが、家族にとっては何よりの幸せであるということを、なによりも家族が認識してくれていたんです。本当に助かりました」

──バルサでのリーガ優勝というのは、昨シーズン、ポルトで果たしたCL制覇の味と比べてどうでしたか?

 「ポルトは1度だけCLを制覇しているのですが、それはもはや17年前のことでした。ですから、あの時はほとんど初めて優勝するようなムードでしたね。僕ら選手も、これまでの雪辱を果たすというよりも、ポルトに新たな歴史を刻んでいる、という意識が強かったように思います。

 一方、バルサの優勝は、本来バルセロナがいるべき王者の地位に帰ってきた、という意味がありましたね。ただ、周囲の昂揚感については、ポルト、バルサともほとんど同じでしたね。スペインにおいて、バルサが5年もの間、リーガ無冠であったことは、他のクラブでの20年分に相当する屈辱であったことを実感しました。

 それに、移籍1年目にして、タイトル獲得を体験できたことは、今後の大きな自信につながりました。毎年多くの有名選手がビッグクラブに移籍しますが、移籍1年目でタイトル獲得の中心にいられることは稀です。僕自身に大きな“自信”をくれた、という意味では、バルサでの優勝は、より格別な意義がありましたね」

──今シーズン、一番、厳しかった時期はいつだったのですか?

 「一時期、9もあったレアルとの勝ち点差を、シーズン終盤になって4点にまで縮められました。運悪く、怪我人も続出してしまった。バルサはここ数年優勝争いをしていませんでしたから、周囲の評価は、バルサはここから落ちていくだろうというものでした。正直、とても辛かったですね。首脳陣の中にも、大事なところで負け続ける、昔のバルサの悪い癖が再現されるのではないかと、疑っていた人もいたようだったからね。あの時期が最大の正念場でした」

──そのピンチをバルサはどう乗り越えたのでしょうか?

 「今季のバルサを牽引してきた選手の多くは、昨季までの悪夢をほとんど知らない選手だったんだ。だからこそ、新たな気持ちで、盛り返すことができたし、昨季までの悪循環を断ち切ることが出来たんです。もっと言えば、監督や選手は、周囲が熱狂すればするほど、冷静になっていった。たしかに、レアルの追撃は脅威だったけど、それでも首位に並ばれたわけではない。そうやって落ち着いていられたことが、困難な時期を乗り越えられた要因だったかもしれないね」

──では、優勝を確信できたのは、いつ頃でしたか?

 「第35節のバレンシア戦だったと思う。その試合の前日、レアルが勝利を収めていたんだ。周りは“このパターンは、昨季と同じだ。この後のバレンシア戦で、バルサが敗れ、最終的にレアルが優勝するんだろう”というムードでしたね。でも、僕たちは極めて冷静に戦い、勝利を収めることができた。バレンシア戦に、バルサらしいサッカーで勝利したことによって、漠然とした不安がなくなり、ジンクスやムードに流されなければ優勝できるんだと、実感できた。優勝への確信を得られた瞬間だったと思う」

──優勝後、お祝いの席もたくさんあったと思いますが、“優勝してよかった”と心底感じたのは、どんな時でしたか。

 「なんと言っても、市内を廻ったパレードで、バルサの優勝を待ち侘びていた人たちの歓喜の笑顔を見た時ですね。あれほど多くの人が、タイトルを待ち望んでいたことを知った驚きと共に、その人たちに、僕らが喜びを与えることができた感動。それは、何物にも代え難いものでした」

──今シーズンのバルセロナは、サポーターから選手まで、大きな一体感に包まれていましたね。

 「その通りだね。戦術も大切かもしれないけど、実は、ロッカールームの雰囲気が、チームプレイに大きな影響を及ぼすことがあるんです。ポルトの時もそうだったけど、ロッカールームの雰囲気が良い時は、試合も順調に進む。反対に、ちぐはぐな時は、何かしら悪いムードが漂っていたりするんだ。誰かの他愛のない冗談で、マッサージ以上のリラックスが得られたり、誰かのちょっとした罵倒が、皆に動揺を与えたり……。

 マスコミの不用意な報道も例外じゃないよ。日々、切磋琢磨している強豪クラブ同士の、レベルの高い紙一重の試合になればなるほど、その影響は計り知れないんだよ。僕はね、ロッカールームの中から試合は始まっているんだと思う。そこで、いかに良い環境を作っていけるかが、試合を左右するんだ」

(以下、Number631号へ)

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