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VS.Argentina宮本恒靖はなぜミスパスをしたのか。 

text by

戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byTamon Matsuzono

posted2004/09/09 00:00

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[日本代表・進化のヒント]VS.Argentina宮本恒靖はなぜミスパスをしたのか。

戸塚啓=文

text by Kei Totsuka

松園多聞=写真

photograph by Tamon Matsuzono

 「(コンディションの悪さからくる)立ちくらみっていうのを、初めて経験しました。本当は前半30分ぐらいで代えてほしかったぐらい。やっぱりボールをとっても、明らかに動き出しとかが遅かったし……タカさん(=鈴木隆行)ぐらいでしょ、動けてたのは」

 アジアカップで全6試合にフル出場し、この日は前半だけで退いた中澤佑二は、試合後に、ちょっと困ったような笑みを浮かべた。屈強でタフなDFが、「とにかくこんなにキツいのは初めてだった」と言うのである。

 8月8日に中国から帰国して14日(または15日)にJリーグ第2ステージ開幕を迎え、18日にアルゼンチン戦である。国際試合を戦えるメンタルとフィジカルを維持していた選手は、たぶんひとりもいなかったはずだ。

 悔やまれるのは試合の入り方だろうか。開始4分でビハインドを背負っては、主導権を引き寄せることはできない。しかも失点の原因はペナルティエリア内での譲り合いだった。こればかりは疲労を理由にできない。ディフェンスリーダーの宮本恒靖が言う。

 「ちょっと残念な形の失点でした。試合の入り方も。できるだけ高い位置を保ってプレッシャーをかけていこうとしたんですが……」

 この試合の見どころは、アルゼンチンがどうやって日本を崩すかだった。アジアで戦う日本と、日本と戦うアルゼンチンは、「対戦相手が自分たちの特徴を潰そうとする」という意味で似たような立場にある。アルゼンチンが日本にやってきたことは、日本の対アジア戦略にも応用できるはずだからだ。

 宮本はヒントを見つけたようだった。中田英寿の離脱後にキャプテンとしてチームをまとめる彼が何かをつかめば、チーム全体に浸透していく期待感がある。

 「プレスがかかっているようで、実際は後手後手になっていた。相手が嫌がるタイミングで取りにいっていない。いい形でプレッシャーにいっても、うまくファウルをもらわれたり、逆サイドに振られたり。質の高いボール回しをされたうえに、質の高い守備をされた。日本もあれぐらいの守備ができたら。ああいう相手のプレスを感じて、自分たちの感覚として持っていけたらいい。久しぶりに骨のある相手とやったような感じがあった」

 アジアカップで優勝したからといって、世界との距離がいきなり縮まるわけではない。そして、現時点ではこちらがより重要なのだが、8月7日のファイナルを境界線にアジアで抜きん出た存在となったわけでもない。3大会連続のワールドカップ出場を勝ち取るには、なおも突き詰めていくべき要素がある。

 気になるのは両サイドだ。3-5-2でも4-4-2でも、両サイドを効果的に生かしきれていないのである。

 アジアカップで対戦したオマーンは、右サイドのアタッカーがファジーなポジションをとることで三都主の攻撃力をブロックしてきた。遠藤保仁と中澤を含めた左サイドの関係に、ちょっとした混乱を生じさせていた。

 この日のアルゼンチンも、変則の3トップを敷くことで日本の3-5-2のメリットを消してきた。三都主と加地亮の両アウトサイドはディフェンス面の負荷が大きく、高い位置をキープできない。攻撃のスタートラインは低くなるうえに、アルゼンチンは帰陣が速い。走り込むスペースもパスコースも探し出せない彼らは、ボールを受けても最終ラインかボランチへ下げるばかりだった。

 もともと三都主と加地は、爆発的な突破力の持ち主ではない。周囲とのコンビネーションで、タッチライン際の攻防を制していくタイプだ。マハダビキア(イラン)のように重量感のあるドリブルでボールを運んでいくのではなく、高い位置でボールに触ることで攻撃的な長所を発揮する。

 アルゼンチン戦の67分に、玉田圭司が決定的なシュートを放っている。DFが触れず、GKも飛び出せないコースへグラウンダーのパスを通したのは、敵陣の中盤まで上がっていた三都主だった。こういう場面を増やしていかなければ、高精度のクロスを操る三都主を起用する意味がないし、3-5-2もデメリットばかり強調されてしまうことになる。

 とはいえ、攻め上がった三都主の背後を突くのは、そろそろアジア全体に浸透しつつある日本攻略のポイントだ。9月8日に対戦するインドも、日本の左サイドに照準を絞ってくるかもしれない。

 2月のオマーン戦のように、MFがガチガチにマークされたら。アルゼンチン戦のように、両サイドが自陣に引きずり込まれたら。頼みのリスタートも不発に終わったら。日本は行き先を失う。負けない試合はできるかもしれないが、勝ち切ることはできない。

 では、攻撃の閉塞感を打ち破るのは誰か。

 ひとつの可能性を示せるのはセンターバックだ。昨年10月に日本が対戦したルーマニアのキブのように、センターバックが起点にもなれば攻撃の幅は拡がっていく。

 この日の宮本はミスパスが目についた。

 前半開始早々に背後から突っかけてきたD・ミリトにボールをさらわれ、そのまま右サイドを突破されて危険なクロスを放り込まれた。周囲のコーチングがあればボールを失わなかったかもしれないこの場面はともかく、前半と後半に2回ずつ犯したフィードのミスは言い訳が許されないだろう。とくに後半終了間際のミスは、もう少しでアルゼンチンの3点目を呼び込んでしまうところだった。

 ただ、ミスが目立つということは、トライしていたということでもある。攻撃のビルドアップにどうやって加わっていくのかを、宮本は模索していたのだ。

(以下、Number610号へ)

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