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ジネディーヌ・ジダン「フットボールは難しい」 

text by

田村修一

田村修一Shuichi Tamura

PROFILE

photograph by

posted2004/07/01 02:55

SPECIAL FEATURES

 

[EURO2004]ジネディーヌ・ジダン「フットボールは難しい」

 

 

田村修一=文

text by Shuichi Tamura

石島道康=写真

photographs by Michi Ishijima

 

 「ダビド(トレゼゲ)のゴールは、たとえハンドであっても感謝しているよ。あれがなければ我々は貴重な勝ち点1を失っていたわけだから」

 ティエリー・アンリがクロアチア戦(2対2)の後に漏らした言葉には、掛け値無しの本音が込められていた。

「いったい何が起こったのか、私には説明できない」

 エメ・ジャケ(フランス元代表監督)は立て続けに失点したディフェンス陣の混乱振りを顧みながら呟いた。

 初戦のイングランド戦(2対1)に続き、ジダンのフリーキックがラッキーなオウンゴールとなって、フランスはクロアチアに対し1対0と先制した。ところが後半開始早々、ペナルティエリアに侵入したクロアチアのロッソに対し、シルベストルが耐え切れずにファウル。ラパイッチの蹴ったPKはボールの勢いが強く、イングランド戦ではベッカムのPKを見事にストップしたバルテズも、どうすることもできなかった。

 そしてそのわずか4分後。ラパイッチのペナルティエリア侵入からはじまった攻撃に、ディフェンス陣が対処できなかった。シルベストルはプルソのマークにつききれず、カバーに入ったデサイーはクリアボールをなんと空振り。プルソに逆転ゴールを決められてしまったのだった。

 フランスがおかしい。その兆しはイングランド戦からあった。フランスを格上の相手と認め、端から引いて守りを固めるイングランドに、リズムをすっかり狂わされてしまったのだった。圧倒的にボールを支配して攻めるが、崩しきれない。キャンベルとキングを中心にしたイングランドの中央ディフェンスは堅く、ゴール前でフランスの攻撃をことごとく跳ね返す。どんなに攻められても、ここさえ崩されなければ点は取られない。まるでイングランド式カテナチオ(イタリアで1960年代に流行した守備的な戦術)とでもいえる、エリクソン監督の現実的な戦い方である。

 そして伝家の宝刀、ベッカムのフリーキックからランパードが強力なヘディングを決める。“これしかない”やり方で1点をもぎ取り、72分には試合を決定づけるPKを得たのだが……。

「ファビアン(バルテズ)が、嫌な流れを変えてくれた」。ジダンが続ける。

「2点目を取られていたら、回復は不可能だっただろう。彼がベッカムのPKを止めた後に、僕にフリーキックのチャンスがやってきた。それが逆転のPKへと繋がっていったわけだから」

(以下、Number605号へ)

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