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女子バレーボール「復活への鍵は過保護との決別」 

text by

山崎浩子

山崎浩子Hiroko Yamasaki

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posted2004/09/09 00:00

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[柳本ジャパンの限界]女子バレーボール「復活への鍵は過保護との決別」

山崎浩子=文

text by Hiroko Yamasaki

 「負けてしまったことは悔しいけど、今日はチームがひとつになって戦えていた」

 中国にストレートで負けて、準々決勝での敗退が決まったあと、大山加奈はそう言った。

 たしかに、1次リーグからすると格段に動きが良くなり、ねばり強さもあった。負けはしたが、後味の悪い思いだけはせずにすんだことだろう。

 しかし、「前半戦をもっとしっかりやっておけばよかった」と彼女が言うとおり、悔いが残る大会でもあった。

 その前半戦の1次リーグは、初戦のブラジル戦、2戦目のイタリア戦とストレート負けし、第3戦のギリシャには勝ったものの、続く韓国戦ではまたもストレート負け。過去4連勝、そして今年5月の最終予選では逆にストレートで勝っている相手だけに、敗戦のショックは大きかった。

 韓国戦後、吉原知子は「誰が見てもチグハグしているように見えたでしょう。やりたいことができなかった。普通はパターンにはまるとうまくいくんだけど、それがうまくいかない。なんでやられているかもわからなくて、あれ?― おかしいな、あれ?― という感じでした」と厳しい表情を浮かべた。

 柳本晶一監督も、「全体的に自分たちのバレーができていない。個人個人はいいけど、チームパフォーマンスとして作り上げていくことに対して、うまくやれていない。あるいは単発ではいいプレーが出るんだけど、流れが良くなりそうになるとサーブミスがあったりして、一からの立て直しを何回もやっている状態だった」と敗因を分析した。「チームがひとつになって戦っていない感じがする」のだと。「その理由はいろいろあると思うが、オリンピックの異様なムードに対して、経験のない者たちがひとつのところに落ち込んでもがいてる感じ」

 オリンピックの異様な雰囲気とは、各競技場に行けば、どこでも感じられるムードである。他の大会とは違う異常な盛り上がり、ゴーッという大歓声。各国の小旗が振られ、観客の熱い視線がこれでもかとばかりに注がれる。ただそれだけで、いつもとは違う何かを感じ取ってしまう。

 しかし、バレーボール会場は、他の競技場ほど異様には思えなかった。観客も多いとは言えず、韓国戦では、韓国の応援団も日本の応援団も互いに懸命に自国の応援をしている。どちらにとっても、ホームでもなくアウェーでもないというような状態だった。

 それからすると、日本で行われるワールドカップの方がよっぽどすごい。あれほど、満員の観客が絶えず日本コールを送り、隣の人と話すこともままならないような大歓声はオリンピックより異様である。

 そういう中で戦ってきている日本選手にとっては、拍子抜けするのではないかと思うほどの応援の少なさであったが、それでも異様な雰囲気と映ったのだろうか。

 彼女たちはみな肩を落としながら言った。

 「自分たちの力を出せなかった」

 自分たちの力……それをすべて出すことほど難しいことはない。特に対戦競技は、相手に力を出させないために、さまざまな策を講じるのである。どんな状況でも、どんな環境でも力を出すには、力の平均点を上げておかなければならない。それが高ければ、多少崩れても「最低でもこのライン」という力が出せるようになるのである。

 もう一つ言えば、アウェーでの経験不足ということもあるだろう。前述したように、日本で開催されるバレーの国際大会は非常に多い。いつでも超満員の観客が黄色い声援を送ってくれる状況では、それがエネルギーになるのは当然。日本での試合は、「力を発揮しやすい場所」となっているのである。だから逆に「力を発揮しにくい場所」をなるだけ経験することだ。そうすればきっと、力の平均点はどんどん上がっていくに違いない。

 結局日本は、格下のケニアにはストレートで勝って準々決勝に進んだ。そして中国を相手にこてんぱんにやっつけられるのかと思いきや、彼女たちは諦めることなく最後まで食らいついていた。

 背中を痛めていた大友愛が必死にジャンプし、吉原や高橋みゆきがここぞというところでスパイクを決める。若い大山はチームの大黒柱のような働きをし、栗原恵もその腕を振り切った。

 けれど次第にブロックにつかまるようになり、健闘はしたが中国に敗れて、彼女たちはアテネでの夏を終えた。

 ミックスゾーンに歩いてくる選手たちは、どの顔も目を真っ赤に泣きはらしていた。絶対に勝てない相手ではなかったという思いが、よけいに悔しさを募らせたのだろう。

 大山は「チームでやってきたことをすべて出そうと思って臨んだ。すごく貴重な経験をしたので、今後はこれを生かしていきたい」と唇をかんだ。

 柳本監督は「今日は集中して良くやったと思う」と選手の健闘をたたえた。「力負けしたわけじゃない。いいバレーができたが、ゲーム運びとか、確実に点を取っていくというところで経験の差が出た。今大会は五輪初出場者が10人いたのでキャリアの差を心配していたが、それがもろに出てしまった。しかし、8年間オリンピックを経験していないチームが、10カ月ぐらいでよくここまでいろんなことができるようになった。これを次に結びつけるために、いまある材料を育てていかないといけない」

 監督が言うように「若い選手がオリンピックを経験したこと自体が収穫」である。この大舞台で自分たちの力を出すには、何が足りないのか。勝つためにはどうしなければならないのか。彼女たちは肌で感じたことだろう。バレーボール復活の扉は、いま開かれたばかりなのである。

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