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マリオ・ゴメス 「生真面目なハンマー」 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2007/12/13 00:20

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マリオ・ゴメス 「生真面目なハンマー」

木崎伸也=文

text by Shinya Kizaki

 まさに値千金だった。

 11月のバイエルン戦の前半10分。左サイドのマニャンがあげたクロスを、中央に走りこんだマリオ・ゴメスがヘディングしようとしたが空振り。しかし、運良くボールが股間に当たり、それがネットに突き刺さったのだ。

 シュツットガルトは3対1で勝利し、バイエルンに今季初めて黒星をつけた。ゴメスの股間が“スーパー・バイエルン”の不敗神話を葬り去ったのである。

 試合後、ゴメスは照れながら言った。

 「人生で最も痛いゴールだった。得点の部位は、腹と腿の間ってことにしておいて」

 マラドーナの神の手ならぬ、神の……。股間に当ててのゴールは、ブンデスリーガ史上初めてのことだ。

 「体のあらゆるところを使ってゴールを決める。ゴメスは真のストライカーであることを証明した」

 シュツットガルトのフェー監督は冗談混じりにユース育ちのエースを絶賛した。

 ゴメスは今、ドイツ代表のなかで最も勢いのあるストライカーだ。

 昨季は14得点をあげてシュツットガルトのブンデスリーガ優勝に貢献し、リーグMVPに選ばれた。今年2月のスイス戦でA代表にデビューすると早速ゴールを決めた。189cmという高さを生かしてヘディングが強いだけでなく、足元のテクニックがあり、スピードもある。

 レーブ監督は、こう評価する。

 「私は手持ちのカードに、ゴメスというハンマーのような武器があることが嬉しい」

 クローゼも、ポドルスキーも、クラニーもいるが、彼らは既にW杯やユーロを経験済み。ユーロ2008において、ゴメスはドイツの攻撃陣に新たな風を吹き込んでくれるだろう。

 1985年、ゴメスはスペイン人の父とドイツ人の母のもと、シュツットガルトから130km離れたリードリンゲンという小さな街で生まれた。バート・ザウルガウやウルムといった地元のクラブですぐにずば抜けた存在になり、名門シュツットガルトからオファーを受けた。だが、ゴメスは「地元でも一流になれる」と豪語して全く興味を示さなかった。田舎チームで天狗になっていたのである。

 しかし、ウルム対シュツットガルトのジュニアユースの試合が、彼の人生を変えることになる。シュツットガルトの洗練されたサッカーの前では何もできず、0対7で完敗してしまったのだ。

 「このままレベルの低いチームにいてはダメだ。すぐにでもシュツットガルトに移籍しなければいけないことに気がついた」

 とのちにゴメスは振り返っている。

(以下、Number693号へ)

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