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長島茂雄大いに語る。 <再録連載第2回> 

text by

瀧 安治

瀧 安治Yasuji Taki

PROFILE

photograph byKiyoshi Nishikawa

posted2009/05/22 11:01

長島茂雄大いに語る。 <再録連載第2回><Number Web> photograph by Kiyoshi Nishikawa

再録連載 第2回(2/3)

監督が批判されているうちは、まだいい。

――しかし、ジャイアンツというのはマスコミの中心で、いつもスポットライトを浴びているわけでしょう。つねに勝たねばならない立場で、あまり負けるわけにはいかない。もう、すでに弱くなってきたジャイアンツヘの罵声が出てきているんじゃないですか。

長島 それはしょうがないですよ。

――その罵声も特に長島監督批判という形が多いですね。

長島 それはいいんですよ。マスコミはコーチを扱ったってしょうがないからね。
だけどね、マスコミの批判がジャイアンツ自体には向けられてないでしょう。長島批判ということになっているから、まだいいんですよ。

――監督がチーム不振の責任を一身に被って、持ちこたえている……。

長島 別に一身に被ってという気持ちもないけどね。まだチーム自体について批判されないうちに、なんとかいいチーム作りの方向を出さないとね。今のうちに外堀を埋めて、人材を要所要所に配置して、若手の力を引き出していくようにしとかないとね。

――絶対にそうですね。

長島 まだ選手についてや、チーム自体についてまで批判は行ってないからね。マスコミが監督批判をしたり、ファンもまだ監督のことを考えているうちに、若手の教育をしっかりしてチームの状態を手直ししなきゃいけないんでしょうね。

――とにかく、一つ一つチェックして教育していくことが大切なんでしょうね。

長島 もう現実にも言われるまでもなく、やってますよ。何かちょっとミスやっても、すぐパッと呼んで教育してますから。
一つ一つ作り上げ、教育していかないといかんでしょうね。誰しも王になり、山本浩二になり、掛布になれるっていうことじゃないんだからね。ある程度、誰でも到達が出来るレベルから積み重ねていく必要があるんですよ。それには、時間をかけながら目を向けつつ、一つずつ作り上げながら育成していくという、やっぱりそれしかないんだよな。

江川は夏に強い。

――しかし、いざ後半戦に突入して、かなり巻き返しを期待しているんですが、今までの話では長時間かかりますね。

長島 もちろん長期的な展望は柱としてありますが、後半戦の巻き返しは当然考えてますよ。

――すると具体的に戦力が揃ってくるんですか。ピッチャーでは新浦が出てくるとか。

長島 新浦はどうかなあ。出てきても後半だね。一回肩を傷めたあとというのは、あてにならんからなあ。

――どうですか、江川は。夏はどうなんでしょうかね。

長島 夏は強いもの、あれは。体格を見てもわかるとおり、寒さより暑さに強いタイプじゃないか。まあ、19試合で17本か、ホームランを打たれていて、しかもそれがチャンスに打たれているという点はあるんで、まだ本当の工ースの安定感というのはないけどね。
しかし、ああいう一つの逆境期の中で、自分との戦いをようやく打破してきたところでしょう。教育していけば自分の素質に磨きがかかってくる時期ですよ。

――江川に関しては、彼が入団して、何か選手問の気持ちのもつれみたいなものがあったんじゃないですか。

長島 そんなのない。そういうことはないな。

――何か調整は、監督自らやったですか。

長島 もうどんどんやってますよ。週刊誌的なもの、ああいうサビを取らにゃいかんからね。江川が入って、ピッチング・スタッフがどうだとか、江川と誰々がどうだとか、コーチと江川がどうだとか、よくそういう形で興味本位でやられてますけどね。内々の人間から見れば、全然根も葉もないことなんですよ。

【次ページ】 堀内はチームのため無欲で頑張って欲しい。

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長嶋茂雄
読売ジャイアンツ

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