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ACミランよ、どこへ行く。 

text by

宮崎隆司

宮崎隆司Takashi Miyazaki

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photograph byAri Takahashi

posted2008/12/18 21:49

ACミランよ、どこへ行く。<Number Web> photograph by Ari Takahashi

 今季のミランは開幕前にバルセロナからロナウジーニョを獲得し、シェフチェンコをチェルシーから呼び戻した。彼らの加入により、カカを含めるとチームにはバロンドール受賞者が3人もいることになる。さらにDFザンブロッタ、MFフラミニを加え、レンタルでDFセンデロスも獲得。レンタルバックでFWボリエッロも加入した。さらに、この冬にはあのベッカムがやってくる。

 この大掛かりな補強は、かつてガラクティコス(銀河系)ともてはやされた数年前のレアル・マドリーを彷彿させる。しかし銀河系レアルはタイトルに恵まれず、スター選手たちが去る形で解体を余儀なくされた。この拝金主義的なスタンスは、チーム強化の典型的な失敗例として人々の記憶に刻まれている。

 ミランはレアルと同じ轍を踏むのでは──。そんな懸念とは裏腹に、ミランは着実に勝ち点を積み重ねている。序盤こそ出遅れたものの、第14節終了時点でユベントスと並んで2位につけている。首位インテルとの勝ち点差は6ポイントで、残りの試合数を考えればまだ射程圏内。豪華補強の大義名分である、5年ぶりの「スクデット奪還」を十分狙えるポジションにいる。

 しかし、ピッチ上のパフォーマンスは、決して楽観視できるものではない。チームの完成度は、ビッグイヤーやスクデットを獲得した当時のチームと比べると格段に劣る。司令塔ピルロがタクトを振る連動性に優れた攻撃は影を潜め、守備も不安定だ。理想とするスタイルも、一向に見えてこない。

 現時点でアンバランス極まりないチームに、ベッカムが加わるのだ。ベッカムの適性は右サイドハーフで、ミランの4-3-2-1システムでは居場所がない。現行布陣では、「残酷なほど美しい」と称される彼の右足クロスを生かすことは難しいだろう。果たしてベッカムがチーム完成度をワンランク高める役割を果たせるのか、甚だ疑わしい。

 いったい、7度の欧州制覇を誇るこの名門クラブはどこへ向かおうとしているのか。

 ミランの補強戦略の問題点は、との問いにミラン番記者は「ここ数年で特に顕著になったのだが」と前置きした上で、なぜスター集めに走るようになったかを説明した。

 「カルチョを知らないはずのガッリアーニ副会長が、月日の経過と共に自らのスカウト能力を過信し始めた。したがって、本来補強を取り仕切るはずのスポーツ・ゼネラル・マネジャーであるブライダへの依存度は、年々低くなっている。カルチョを知り尽くしているブライダは、あろうことか単なる副会長の相談相手にまで成り下がっている」

 ブライダとは、かつて誰よりも早くファンバステンの才能を見出し、欧州各国の強豪クラブとの争奪戦を制して、成長過程にあるライカールト、ウェア、シェフチェンコなどを引き抜いた辣腕スカウトだ。いわば近代ミランの礎を築いた男である。元選手としておよそ20年のキャリアも持っている。

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