カメラマンが語る:スポーツ写真の魅力とはBACK NUMBER

コンマ何秒しか浮かばない一瞬の表情を捉える。 

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福本悠

福本悠Yu Fukumoto

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2009/04/23 09:58

コンマ何秒しか浮かばない一瞬の表情を捉える。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama
埼玉スタジアムで行われたワールドカップアジア最終予選「日本対ウズべキスタン」。
5万人を超える観衆が固唾を飲んで見守る試合を撮影した
カメラマン・杉山拓也にスポーツ写真を撮る醍醐味を聞いた。

「スポーツを撮っていて一番おもしろいのは、自分が想像していた以上の絵が撮れたときですね」

 目の前で起こる一瞬のプレーを切り取るスポーツ写真の場合『熱くなってはいい絵は撮れない』というのが杉山の持論。撮影中は常に冷静な目でアスリートたちのプレーを追っている。それでもときにはシャッターを切っていて、思わず鳥肌がたつような瞬間を目にすることがあるのだとか。

「そういう場面をカメラに収めることができたときは、カメラマンになって本当によかったと実感します」

テレビでは絶対に見られない一瞬を切り取る

 そんな杉山が、サッカーを撮るときに狙うのは、プレー中に選手が見せる一瞬の表情だ。

「試合中だと普段は見せない表情を見せることがあるんです。めったに笑わないクールな選手が上手くプレーが決まった後、ニヤっとしたりとか。それこそテレビでも分からないようなコンマ何秒で見せる顔。その瞬間を撮れたときは気持ちいいですね」

 サッカーの写真というとどうしてもゴールシーンをイメージするが、杉山はゴールが決まったときも得点を上げた選手だけではなく、その一つ前のプレーで得点に絡んだ選手の顔も気になる。

「人と同じ写真を撮っても仕方ないので、一つ前のプレーをした選手は必ずチェックしています。得点を決めた選手から離れたところで、センタリングを上げた選手が人知れずガッツポーズをしている。そういう絵が撮れると、いただきって思います(笑)」

いい写真を撮るためにはスポーツ以外でも感性を磨く

 たとえ同じ試合の同じプレーを撮っていたとしても、上がってきた写真にはそれぞれのカメラマンが持つ個性が現れると杉山は言う。

「これからスポーツ写真を撮りたい人は、スポーツに限らずいろいろな世界を見て自分の感性を磨くといいと思います。好きな音楽をたくさん聴くのでもいいし、海外旅行に行ってもいい。まずは自分の写真のスタイルを見つけることが大切ですね」

写真 ウズベキスタン守備陣をドリブルでかわそうとする中村俊輔。その瞬間を杉山のカメラが捉えた。
大学卒業後、'94年に文藝春秋に入社、写真部に配属される。『Number』では、サッカーのほかフィギュアスケートを担当。EURO2008にもカメラマンとして派遣される。'04年アテネオリンピック、'06年トリノオリンピック、'08年北京オリンピックでは、日本雑誌協会代表カメラマンとして活躍。スポーツ写真を中心に文藝春秋が発行する全雑誌の撮影に携わっている

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