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吉原知子が見た全日本に必要なこと。 

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久保大

久保大Masaru Kubo

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posted2007/11/29 00:00

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[バレーボールW杯総括]吉原知子が見た全日本に必要なこと。

久保大=文

text by Masaru Kubo

 女子バレーボール・ワールドカップで日本はアメリカに敗れ、上位3カ国に与えられる北京オリンピック出場権を逃した。五輪出場を果たし、その先にあるメダル奪取に必要なものはなんだろうか。全日本女子をアテネ五輪出場に導いた前キャプテン・吉原知子はワールドカップ11試合をこう総括する。

 「日本に力がないわけではないと思います。今大会も圧倒された試合というのはそんなになかった。ただ逆に、世界の強豪と戦った時に日本が簡単に勝つという試合も難しい。日本が生きる道というのは、競った試合をものにしていくしかない。そのためには、ゲームメイク、ゲーム運びの上手さが必要になってきます」

 日本はポーランド戦こそフルセットで制したものの、セルビア戦では第4セット22-16から逆転を許し、キューバ戦も第2セットでセットポイントを握りながら落としてしまった。吉原は「ゲームの流れをつかむためには、日本から仕掛けていくことも必要」と指摘する。たとえば、キューバは、日本戦の中盤になってセンター攻撃を多用した。センター攻撃を意識させられた日本は、サイドアタッカーに対するブロックが遅れてしまった。

 「一度センターに絞ってブロックを飛んでみるだけでも変わってくると思います。決まらなくても、キューバのセッターはマークされたことを意識せざるをえなくなる。セットの後半に効いてくるような布石を日本が先に打っていけば、もっと試合を楽に運べるようになるはずです。

 競った場面というのは、コートの中にゲームの流れを冷静に読める人間が何人いるかという勝負になってきます。もちろん監督やスタッフのアドバイスも重要ですが、コートで相手と対峙している選手にしかわからないこともたくさんあります。コート内の一人一人がもっと自分を磨いていって、勝負どころの判断、駆け引きができるようになっていってほしいと思います」

 さらに、日本が接戦をものにするために必要なものが、“心のスタミナ”だと言う。

 「よく心技体と言いますが、文字通り、まず心がしっかりしてないと、いくら技術をもっていても発揮できません。連戦が続くと身体的にも精神的にも疲労してきます。海外の強豪国はフィジカルのスタミナはもちろんですが、“心のスタミナ”がすごいなと感心させられました」

 特に感心させられたのが、一番乗りで北京行きを決めたイタリアだと言う。ヨーロッパ王者のイタリアといえど、楽な試合ばかりだったわけではない。セルビアとの試合はフルセットの勝利だった。

 「完全に負け試合の内容ですよ。でも、絶対に勝負を捨てないで、フルセットに持ち込んで勝ってしまう。スタメンの選手だけではなくて、ベンチの選手も同じタフさを持っている。世界ランク3位のブラジル相手に控えセッターでストレート勝ちしています。チーム全体でしっかり心の準備ができている」

 チーム全体で戦うという姿勢は日本にも求められる。

 「日本は一人の大エースが決めるというバレーではなくて、拾って攻め返していくというバレーです。もっとチームプレーにこだわって、12人が結集していけば結果はついてくるはずです」

 日本は、来年5月、東京で開かれるアジア兼世界最終予選で北京への最後の切符を争う。アジア4カ国とその他の地域から4カ国の計8カ国が参加し、アジア1位と上位3位(アジア1位国が3位以内に入っている場合は4位)の4カ国が出場権を得る。

 「各国ともラストチャンスですから目の色を変えてきます。日本に10連敗中の韓国も力をつけてきています。最終予選までに、自分たちは勝てるんだという裏づけになるものを何か作っておいてほしいですね」

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