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フランス「レ・ミゼラブル」 

text by

田村修一

田村修一Shuichi Tamura

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2008/07/10 18:28

 大会前は優勝候補の一角と目されていたフランスが、グループリーグで敗退した。“死のグループ”とはいえ1分2敗、得点1失点6の最下位という結果は、期待を大幅に裏切る内容だった。いったいフランスに何が起こったのか。'02年W杯以来の惨敗に至るディテールをたどった。

 6月3日、スタッド・ド・フランスでのコロンビア戦。テストマッチ3連戦の最後の試合にフランスは、6日後に迫るルーマニア戦の先発と見られるメンバーを並べてきた。しかし調整の遅れは明らかで、DFはようやくレギュラーが出揃ったが、誰もが精彩を欠きミスが多い。ことにエリック・アビダルは、相手FWに置き去りにされるなど散々で、2週間後のイタリア戦で退場処分をうけたとき、真っ先に思い出したのがこのシーンだった。

 攻撃は、2トップのティエリ・アンリとカリム・ベンゼマ、トップ下のフランク・リベリーが息の合ったコンビネーションを見せる。とくにリベリーとベンゼマは頻繁にポジションを変えながら、流れるようにボールをつないでいく。ただし他の選手との連携はいまひとつで、3人のボランチの押し上げもない。

 5月21日から合宿が始まったものの、初日に集合した選手はわずか15人だけ。チャンピオンズリーグ決勝(21日)、フランスカップ、コッパイタリア決勝(ともに24日)を経て、全員が揃ったのはエクアドル戦(27日)直前のこと。大会前は入念な準備を欠かさないフランスが、どうしてこんな日程しか組めなかったのか。驕りがあったといわれても仕方がないだろう。

 ただ思い返せば、2年前のドイツW杯前も状況は似ていた。大会前のテストマッチ、メキシコ戦で目にしたのは、リリアン・テュラムをはじめとするベテラン勢の無残な衰えと、ジネディーヌ・ジダンの目を覆わんばかりの不調であった。

 「フランスはグループリーグで消える」

 本気でそう思ったが、復活したベテランたちがチームを牽引し、結果は準優勝。だから同じようなフランスを目にしても、否定的にはなれなかった。それは私ばかりでなく、プレスや世論も同じ気持ちであった。

 レイモン・ドメネク監督も、2年前の戦略を踏襲した。テュラムやパトリック・ビエラ、ウィリー・サニョル、アンリら軸となるベテランに絶対的な信頼を寄せ、2年前のリベリー同様に、'07-'08シーズンのリーグアンで16得点をあげ躍進著しいバフェティンビ・ゴミスを、一度の代表歴もないままメンバーに選び、ジョーカーの役割を期待した。

 負傷のビエラは、ルーマニア戦には間に合わない。回復具合も微妙で、メンバーに入れるかどうかは、登録期限(初戦当日)ぎりぎりまでドメネクも決断を保留した。

 迎えたルーマニア戦、ビエラはベンチに座った。だがそこには、ピッチに立つべきアンリの姿もあった。コロンビア戦での太腿負傷には箝口令が敷かれ、ドメネクはニコラ・アネルカとベンゼマという、ぶっつけ本番の2トップ(2人がそれまで一緒にプレーしたのは65分だけ)で臨んだのだった。

 ドメネクはシステムも変えた。コロンビア戦の4-3-1-2からクラシックな4-4-2へ。ところが右サイドのリベリーは、ルーマニアDFに囲まれ、ベンゼマとの関係を分断されてしまう。

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