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功を奏した“ドログバ封じ”。 

text by

大住良之

大住良之Yoshiyuki Osumi

PROFILE

posted2006/06/28 22:38

SPECIAL FEATURES

[オランダ×コートジボワール]功を奏した“ドログバ封じ”。

大住良之=文

text by Yoshiyuki Osumi

 シュート数は、オランダの9本に対し、コートジボワールは16本だった。しかし、そのうちゴールの枠内に飛んだものは8対9。そこに、この試合の本質がある。

 気温28度。一時よりは下がったが、この日は湿度が高く、オランダの選手たちにとっては最も苦手とするピッチコンディションだっただろう。立ち上がりから動きに鋭さがなく、慎重に守るコートジボワールを崩すことができない。コートジボワールもアルゼンチン戦の敗戦が響いているのか、あまり無理をして攻めない。この試合最初のシュートが前半16分のコートジボワールMFロマリックのものである事実を見るだけで、どんな立ち上がりだったか理解できるだろう。対するオランダの初シュートに至っては、前半23分まで待たなければならなかったのである。

 それがゴール前21mからのFKだった。自ら倒されて得たFKを、右ウイングのファンペルシが正確に壁の外側を打ち抜いた。そして4分後、オランダの2本目のシュートはFWファンニステルローイ。左ウイングのロッベンのパスを受けてDFラインの背後に抜け出し、冷静にゴールネットを揺らした。

 だが、前半33分にMFゾコラのミドルシュートが強烈にバーを叩いたころから、試合は圧倒的なコートジボワールのペースになる。38分には、小柄なFWのB・コネがドリブルから強烈なミドルシュートを叩き込んで1点差に詰め寄った。

 後半は一方的といってよい展開だった。オランダは右のファンペルシ、左のロッベンを軸にカウンターを狙うが、前半の中ごろに見せたチーム全体のダイナミックさはなく、攻めはいずれも単発に終わった。そして攻撃の選手を次々と取り替えたコートジボワールに対し、次第に守勢一方となっていく。

 後半31分には、MFアカレの右CKをFWドログバが頭で折り返し、オランダのゴール前に混乱が起きた。だが最初のピンチはファンペルシがゴール前で体を張って防ぎ、次のシュートはMFファンボメルがブロックした。決定的な場面になると、オランダの選手たちは驚異的な粘りを見せた。

 あと5分試合が続いていたら、同点ゴール、あるいは逆転ゴールまで生まれていたかもしれない。しかし、ロスタイムの目安の4分が経つ前に、コロンビア人のルイス主審は終了の笛を吹いた。2-1でオランダの勝利。直前の試合でセルビア・モンテネグロを6-0で下したアルゼンチンとともに、勝ち点を6に伸ばしたオランダの決勝トーナメント進出が決まった。オレンジ色に染まったスタンドとピッチ上の選手たちが一体となり、歓喜の踊りはなかなか終わらなかった。

 オランダにとって、この試合の大きな課題はコートジボワールのドログバ封じだったに違いない。彼はアルゼンチン戦で驚異的な身体能力を生かして攻撃を引っ張り、見事な1点を決めていた。このドログバだけにはシュートはさせないというのが、オランダ守備陣の共通意識だったのだろう。けっしてフリーにさせず、劣勢の試合を通じて彼に2本しかシュートを許さなかったことが、オランダに勝利をもたらした。

 オランダがドログバを厳しくマークしたことで、その周囲の選手にシュートチャンスが回った。とくに髪の毛を脱色したFWのA・コネに決定的な場面が数多く訪れた。だが、その大半がゴールから大きく逸れた。ドログバ以外の選手たちのシュートの精度の低さは、かつてのアフリカ・サッカーの弱点をそのまま引き摺るものだった。

 コートジボワールは、チーム戦術としても個々の能力でも上位を狙う力は十分にあった。しかし得点力はドログバに頼るしかなかった。それが敗退の原因だった。劣勢に回っても、9本のシュートのうち8本を相手ゴールの枠内に飛ばし、その最初の2本を確実に決めたオランダの勝利は順当なものだった。

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