Sports Graphic NumberBACK NUMBER

東方蹴球見聞録。 

text by

アラン・トネッティ

アラン・トネッティAlan Tonetti

PROFILE

photograph byEri Okamoto

posted2009/03/26 20:19

東方蹴球見聞録。<Number Web> photograph by Eri Okamoto

母国でサッカー討論番組の司会を務めるかたわら、ウイイレもWCCFもやりこむ。
ピッツァと砂糖いっぱいのエスプレッソと、サッカーの組織戦術をこよなく愛する
イタリア人ジャーナリストの目に、Jリーグ開幕戦はどのように映ったのか――。

 美しいサッカーとは何か。

 イタリア人ジャーナリストの僕にとっては、「組織戦術の精度が高いサッカー」ということになる。パスをつなぐオランダのようなサッカーこそ美しいという意見もあるようだが、ああいうスタイルはどうしてもミスが増えてしまう傾向にある。あくまでも、守備におけるミスの少ないサッカーが美しいサッカーなのだ。無論、もっとも美しいスコアとは1-0(ウーノ・ゼロ)である。

 現在テレビのサッカー討論番組で司会を務める僕にとって、戦術について考え、語ることは息をするくらい自然なこと。6歳でサッカーを始め、15歳までFWとしてロンバルディア州選抜でプレーしていたから(その上のカテゴリーには上がれなかったが)、イタリアサッカーのエッセンスが体に染み付いている。さらにもうひとつ。テレビゲームの『ウイニングイレブン』では、'06年の大会でイタリア4位に輝き、あと一歩のところで世界大会出場を逃したほど。使うチーム? ミランと言いたいところだけど、マンチェスター・ユナイテッド。戦うからには勝負に徹するのがイタリアのやり方だからね。カードを使って遊ぶ『WCCF』も、ミラノに一軒しかないゲームセンターで日夜腕を磨いている。今回も成田空港から渋谷のゲームセンターに直行してまずは一戦。最初4-2-3-1で試合をはじめ、後半35分くらいに先取点を入れると、4-4-1-1にして、フィールドプレーヤー8人を自陣に引く。きっちり守り抜いて、ここでも1-0で勝利を収めることができた。ブラボー!

 余談が過ぎたが、今回、そんなイタリア人の視点からJリーグの試合を分析してみたい。イタリア人と同様、日本人はブラジル人のような足技とボディバランスを持ち合わせているわけでもなく、またあるいはオランダ人のようなパワーとスピードも備えていない。とすれば、僕のアドバイスは有益なのではないかと思っている。

 

鹿島アントラーズ 2-0 浦和レッズ

 3・7(土) @カシマスタジアム

 まず見に行ったのは鹿島対浦和。昨年までリーグを連覇しているチームと、日本随一のビッグクラブとの対戦ということで、非常に楽しみだった。トーキョー駅からバスに乗って、鹿島のホームスタジアムに向かう。

 この日、勝者となる鹿島は間違いなく上質のサッカーを見せていた。技術的にもすでにしっかりした守備組織を作り上げていて、まとまりが実に素晴らしかった。立ち上がり15分間くらいは多少のミスがあったとはいえ、守備ではCBの岩政を軸に堅実なプレーに徹し、組み立てる際は野沢の動きが実に効いていた。

 試合を通してDFラインが乱れることはなく、岩政の判断に合わせて他の選手が連動する様も見事だった。監督の采配も的確。相手の中盤が常にボール近くに密集していると見るや、後半の5分過ぎあたりから両サイドの有効活用を指示しているはずだ。それまではセンターエリアでのプレーの組み立てが多かったのだが、相手の中盤の塊を突破できないと見るや4-2-2-2を4-2-3-1に改め、相手を分散させるべく両サイドを軸とする攻撃に移行している。最後まで鹿島が崩れる気配はなかった。

 もっとも、前半22分のゴールは相手ディフェンスのミスが要因だった。GKのフィードからのカウンター。フィールド中央を縦に走る野沢に浦和のMFが付いていかず、最後は完全に数的優位な状態でゴールの形を作っている。野沢にラストパスを送ったマルキーニョスには3つもの選択肢があった。守備を重視する考えがもう少しあれば、いくら相手が鋭いカウンターを繰り出してきても、あれほど無防備な姿を晒すことはない。

1 2 NEXT
1/2ページ
関連キーワード
遠藤保仁
細貝萌
ガンバ大阪
浦和レッズ
鹿島アントラーズ

ページトップ