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声よ響け!杜の都に。 

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

PROFILE

posted2005/01/20 00:47

 会合の後、菅原さんとその仲間たちに、ファミリーレストラン「ミルキーウェイ」で話を聞いた。この会で若手に位置づけられる彼らは、10年以上、ベガルタ仙台のサポートを続けてきたグループでもある。

 どうやら、課題は山ほどあるらしい。

 仙台独特の腰が重く、勝ち馬にしか乗らない人々の気質、十何団体もできた応援団に連携がないこと、「東北楽天ゴールデンイーグルス」という名称が呼びづらいことなどを、彼らはぶつぶつぼやいた。

 なるほど、気持ちはわからぬでもない。仙台市内を歩いていても、楽天野球団のイメージを感じさせるものには、ほとんど出会うことがない。繁華街の虎屋横丁、稲荷小路がちょっとばかり頑張っているくらいなのだ。シーズンが開幕してしまえば間違いなく盛り上がるのだろうが、いまのところ仙台の人々は様子見をしているようにも映る。

 だが、だからこそチームリベロの若者たちは燃えている。ゼロからの出発という「歴史的偉業」に関わるという事実が、彼らの気分を高揚させているのだ。

 「100敗してもいいんですよ。初めは弱いチームを応援する楽しさ、みんなで声を出すことの爽快感を伝えられたらって。実はチームコールも僕らの中では決まっていて」

 テーブルを叩きながら、菅原さんは「ゴー、ゴー、ゴールデンイーグルス!」と何度かやってみせてくれた。お年寄りには難しそうだけど、でも、格好いいじゃないですか。

 それにしても、すずめ踊りとはいったい何なのか。聞けば、どうやら青葉まつりで披露される、宮城の名物ということらしいのだが。

 翌日、小春日和に誘われて、日本三景の松島までぶらりと足を伸ばした。遊覧船「仁王丸」の出航まで時間はたっぷりとある。せっかくなので、係のお爺さんに聞いてみよう。

 すずめ踊りって、どんなんですか?

 「ああ、ちょっとあれは憶えづれえんだな。テンポ速くてな。あんまり古くからやってたものじゃねえんだけど、半纏だか法被みたいな何かを羽織ってだなあ、パッカパッカ、チャッチャッてやんだな」

 長いすに腰掛けた75歳の渡辺さんは、歌舞伎役者が見得を切るように両手を広げ、ご機嫌に掌をかざしてみせた。

 わあ、楽しそうですねえ。

 「だなア。で、すずめ踊りがどうした?」

 楽天の応援団がやるとか、やらないとか。

 「ああ、それはかなりいい。本塁打でも出たら、パッカパッカ、チャッチャッてな」

 すずめ踊りに清き一票が投じられた。

 仙台から発信される新しい応援。そのスタイルはいまのところ見えてこないが、すずめ踊りだけは是非とも実現させてほしいものだ。

 この春、仙台の空にイヌワシが舞う。願わくば、雀たちも一緒に。

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東北楽天ゴールデンイーグルス

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