オフサイド・トリップBACK NUMBER
過去と比べあまりにも「地味」過ぎ?
マンU&ファーガソンの黄金期を検証。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/05/13 10:30
1986年からマンチェスターUの指揮を執るサー・アレックス・ファーガソンも今年で70歳を迎える。ギグスやベッカムなど「ファーギーズ・フレッジリングス(ファーガソンの雛鳥)」と呼ばれるスター選手たちがいる
今季のマンUの特徴は「地味さ」!?
5月28日、マンUはバルサへの雪辱を期してCLファイナルに挑む。
決勝の舞台はウェンブリーなだけにとりあえずイングランドのクラブとして面子を保つ形になった。('02-'03シーズンのCL決勝では、ホームのオールドトラフォードで、ミランとユベントスがひどい試合をするのを見るハメになった)。
では今回のチームの特徴はなにか。先に述べたように、これがなんと「地味さ」なのである。
たしかにナニやアンデルソンなどは一流の選手だ。しかし超一流かといわれれば疑問符がつく。バレンシアもシャルケのようなクラブを相手にした場合には存在感を発揮できるが、彼もまた傑出した存在ではない(シャルケを腐しているのではないので念のため。CLでベスト4に食い込んだのは快挙だし、敗戦は貴重な経験値になる)。
ビディッチやファーディナンドも往年の輝きを失っているし、ルーニーでさえ数年前までの存在感とカリスマ性を失いつつある。FWのエルナンデスは化ける可能性があると思うが、もとを正せば、そもそもスコールズやギグスがいまだに現役で試合に出場していること自体、良くも悪くも驚異的だ。
簡単にいえば今のマンUには、かつてのベッカムやロナウドに象徴されるように、プレーの上でもカリスマ性においても、否が応でもファンの目を釘付けにする絶対的なスター選手がいない。しかもサッカーそのものも、バルサやレアルなどに比べればコンベンショナル(従来型=ふつう)。キャラが立っていない印象はどうしても残ってしまう。
前回のバルサ戦では、ジレンマを抱えて自滅しているマンU。
しかし、何が起きるのかわからないのがサッカー。
スター軍団が伏兵に足を掬われることはままあるし、とりわけCL決勝のような一発勝負となればなおさらだろう(と信じたい)。それに、たとえバルサが娯楽性に富む「いいサッカー」をするチームだとしても、オシムが語るように「バルサばかりが勝つというのも、それはそれでつまらない」。
前回バルサと対戦した際のマンUは、相手がバルサなだけに(チェルシー相手のCL決勝と違って)プライドにかけても守備的なサッカーをするわけにはいかず、かといって攻撃ではまったく得点の緒を掴めないというジレンマを乗り越えられなかった。