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日本勢不振の理由は……。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

posted2007/08/30 00:00

 陸上世界選手権も中盤にさしかかった。この原稿を書いている8月29日現在、日本勢のメダルは0。入賞も男子マラソンの3人と室伏広治の4だけ。最近の大会では、'03年のパリ大会がメダル4、入賞8。'05年のヘルシンキ大会ではメダル2、入賞8。もちろん今後の種目で、メダルや入賞の可能性はまだ残ってはいるので、日本代表の最終的な評価は大会終了を待たなければならないが、前半戦は、上位進出が期待されていた選手たちの不振が目立っている。

 理由は、選手それぞれ異なり、ひとくくりにはできない。

 予選敗退に終わった為末と池田にかんして言えば、今大会に万全の状態で臨んだわけではなかった。

 2人とも、長期的な視点に立って新たな試みに取り組んでいる途中だった。為末はハードルを始めてから初めて、ハードル間の歩数を変更し、池田は助走速度を上げて、飛距離をのばそうとしていたのだ。

 しかし、その試みは残念ながら、世界選手権の前に完成しなかった。為末は不調から7月に欧州遠征を切り上げざるをえなかったし、池田もまた、5月に6m73を記録して以降は、助走速度の向上によって踏み切りがあわない状態に陥り記録が低迷していた。

 今季の世界ランキングも為末が18位(出場選手中では15位)、池田は26位(出場選手中では14位)。400mハードルは準決勝に進出できるのは16 名、走り幅跳びは予選を突破して決勝に進めるのは基本的に12名。つまり、2人とも純粋に今季の成績だけを見れば、上位進出が手堅いといえる位置にはいなかったといえる。

 むろん、大会中に新しい走法が上手くいけば、今季最高のパフォーマンスが発揮できる可能性もあった。だが、冷静に大会までの過程を考えれば、それは難しかった。

 さらに、地元開催でのメダル獲得というプレッシャーも影響した。

 為末はレース後、「不調でもメダルと言わなければならないのはきつかったです」と語っていた。為末、池田の今季の状況を考えれば、過剰な期待が集まっていた感があるのは否めない。

 新しい試みが世界選手権に間に合わなかった為末、池田だが、新走法へのチャレンジ自体は否定するべきものではない。大阪には間に合わなかったが、リスクを背負わなければ前進はないし、世界の上位への進出は望めない。

 今回の結果を受けて方向を修正するにせよ、このまま突きつめていくにせよ、本当の勝負の場である来年の北京五輪では、ぜひ自信をもって臨んでほしい。

 一方、今季の成績からすれば、予想外の成績に終わったのが末續慎吾である。今季の世界ランキングで末續は9位。出場した選手の中では6位だ。大会前の調整も順調で、十分上位が望める位置にいた。

 にもかかわらず、アクシデントが末續を襲った。一次予選終了後に脱水症状を呈しており、点滴を打って二次予選に臨んだのだ。結果、20秒70と、一次予選の20秒47よりタイムを落とし、準決勝に進めなかった。

 末續同様、走り高跳びの醍醐直幸もまた、両足がつるアクシデントに見舞われ、予選敗退に終わっている。コンディショニングに問題があったのか、あるいはほかの原因か、現段階でははっきりしていないが、なぜ体調面でのアクシデントが起きたのかについては緻密な検証が必要だろう。

 200mで実力を発揮しきれずに終わった末續には、4×100mリレー(予選31日、決勝9月1日)のエースとしての役割も残されている。

 二次予選後も点滴を打つなど治療を受けたあと、末續は足をひきずり精気のない表情でミックスゾーンに現れると、力を振り絞るように言った。

 「リレーに向けて調整したいです」

 体調の回復次第だが、リベンジの機会は残されている。願わくば、完全な回復をまっての出場を望みたい。

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