「イニエスタをマークするのは拷問にかけられるようなもの」
“ドリームチーム”のキャプテンとして一時代を築いたホセ・マリ・バケーロが称えるポイントは別だ。
「ドリブルやスピードもいいが、俺が特に気に入っているのはライン間の動き方。それからシュート動作の速さ。試合の読みも申し分ない」
リズムを変えるセンスも特筆すべきだろう。ドリブル中のチェンジ・オブ・ペースは無論のこと、敵陣で仲間と緩いボールを繋ぐ中、一転“急”のスルーパスを出したりする。タメを作って周りの動きを待つと思わせて、突如ゴールへ突進したりもする。ノーモーションで出されるパンチのごとく予備動作は一切なし。守る側の対処はどうしても遅れてしまう。
「イニエスタをマークするのは拷問にかけられるようなもの。とんでもないテクニックを持っている上、予測不可能だから。どのタイミングで何をされるのか、右から抜きに来るのか、左から来るのか、抜いた後は中へ入って行くのか、サイドを上がって行くのか、全く予想もつかない」
6シーズン前の初対戦以降、散々な目に遭わされ続けてきたバレンシアのディフェンダー、アレクシス・ルアノは嘆く。
攻撃だけではなく、実はディフェンス力にも非凡なものが。

シャビに「君を追い出す才能を持った選手がいる」とイニエスタのことを伝えたグアルディオラだが、後に「シャビがあんなにすごいプレーヤーになるとは思わなかった」と謝罪もしている
ポジションの関係上、攻撃面の長所ばかりが目に付くが、イニエスタはディフェンスもかなり巧い。ベナイジェスが言うとおり、不利なフィジカルコンタクトは避けるようにしているので、1対1は一見弱腰だ。しかし適確なポジショニングは、バルサのように組織的に守るチームにおいては、プレッシングという形で具体的な力に変わる。じわじわと距離を詰め、隙を窺ってボールを奪うワザは見事のひとこと。おまけに、器用さと戦術理解力も非凡ときている。
「監督にとってリオネル・メッシがチームにいるのは幸運だ。右サイドに置いても、左に置いても、ワントップにしても、常に素晴らしいプレーをしてくれる。でもイニエスタはね、本当にポジションを選ばない。サイドバックをやっている姿はあまり覚えていないが、何処をやらせても見事にはまるんだ」
グアルディオラはただ褒めるのみ。
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(更新日:2009年11月5日)
筆者プロフィール
横井伸幸
1969年5月生まれ。愛知県出身。大学生の頃から世界を見て回り、90年代半ばと2001年以降の計8年をバルセロナで過ごす。美しい動きは強さを伴うと信じるスポーツ耽美派で、何でも観ては何でも楽しむけれど、自分でやるのは格闘技。コメディ映画と80年代の洋楽をこよなく愛する。

























