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短期決戦の醍醐味を味わう。原博実×中西哲生(前編) 

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2008/06/10 18:09

──今回はユーロの達人ということで、原さんと中西さんに来ていただきました。まずはじめに、お二人のユーロの思い出を語っていただけますか。

原 やっぱり'84年大会を現地で見られたことかな。開催国のフランスが優勝したんだけど、あのときのプラティニは凄かった。9ゴールで得点王になって、アシストもたくさん。すべてが上手く行くって感じで。

中西 あの大会のプラティニって、史上最高のトータルプレイヤーでしたよね。僕もフランスの全試合、映像で見たんですけど、シュート、パス、ドリブル、ヘッド、何から何まで凄かった。ところで原さん、どうしてあの大会を生で見られたんですか?

原 あの年、三菱重工サッカー部のヨーロッパ研修があってドイツに行ったの。その前にユーロをやってるってことで、フランスに寄ってユーロを見て、プラティニのプレーに感激したのを憶えています。実は、4年後のオランダの優勝も生で見たんだよ。

中西 えっ?― そうなんですか?

原 決勝の、あの伝説的なファンバステンのボレーを現場で目撃したんだ。折り返すと思ったら、そのまま撃って入っちゃった。あれは驚いたねえ。西ドイツ対オランダの準決勝も面白かったな。ファンバステンとコーラーの1対1、あの対決は見応えがあった。

中西 僕もJリーグ開幕前年のユーロ'92を生で見ました。ナビスコカップの開幕前に名古屋グランパスがヨーロッパ遠征をして、その最後にユーロの準決勝、決勝を見られたんです。デンマークが優勝した大会を。

原 それ、最高だね。

中西 ええ、凄く楽しかったです。プラティニやファンバステンがそうですけど、ユーロって凄いプレー、凄い試合が次々と飛び出しますよね。出場国のレベルが高くないと、ああいうものはなかなか出ない。ただ、いつ飛び出すかわからないから、全部見ないといけないんですけど(笑)。前回大会でもチェコ対オランダ、ポルトガル対イングランドなんて名勝負がありました。

原 そう、レベルが高くて、すべてのカードに歴史的背景があるから、退屈しないんだよ。番狂わせだって頻繁に起きるし。

──今大会、特別に期待しているチームはありますか。

原 いまのサッカーは、守りの強いチームが勝つっていう流れだよね。ギリシャが優勝した前回大会もそうだし、イタリアが勝った2年前のワールドカップもそう。その流れで考えると決勝はドイツ対イタリアになるのかなあ。気持ちの上では、そろそろポルトガルやスペインあたりに来てほしいけど。

中西 仰るとおりです(笑)!― 個人的には世界のサッカーが美しさを追求する流れになってほしいんで、そうなるとやっぱりこの2チームかなって。

原 ポルトガルといったらクリスティアーノ・ロナウドだけど、マンUで二冠を獲った今、どんなコンディション、モチベーションで臨むのだろうか?

中西 開幕までの2週間でネジを巻き直せるか、そこは監督の仕事だと思います。他の選手と同列に扱って練習させたら、きっと疲れちゃうと思う。焦らず、モチベーションが自然と上がってくるのを待ってあげればいいんじゃないですか。ただ、ポルトガル自体は意欲十分でしょうね。前回が準優勝で、2年前のワールドカップがベスト4ですから、今度こそと思っているはずですよ。

原 気になるのはストライカーかな。ロナウド、デコ、クアレスマ、シモン、ナニがいる豪華な中盤に比べると、ストライカーがヌーノ・ゴメスだもんね、いまだに。

中西 この4年間で結局、ストライカーが育たなかった。フィーゴが偉大だったということでしょうね。凄い選手が出ると、若者はそれを真似する。ポルトガルから優秀なサイドアタッカーが次々と出てくるのは、そこだと思うんです。偉大なストライカーが出てきたら、流れは変わると思いますが。

──スペインは期待されながら負けるというパターンですが、今回はどうですか。

中西 期待してるし、優勝予想に挙げてるけど、厳しいと思う。

原 でも、そろそろ行くんじゃないかな?

中西 だといいんですが(笑)。

原 モチベーションは高いと思う。レアルはチャンピオンズリーグでいいところがなかったし、バルサは尻すぼみ。バレンシアなんて最悪のシーズンでしょ?― 例年になく悔しい思いをした選手が多いよね。その意味で意地見せてほしいね。

中西 セスクも大活躍したわりに、アーセナルはタイトルを取れなかったですからね。

──そういえば、ラウールはもう出ないみたいですね。

中西 アラゴネス監督が思い切った決断をしました。おそらくラウールくらい存在感の大きな選手は、一度選んだら使わないわけにはいかなくなる。火種は持って行かない方がいい、という考え方ですよね。

原 ラウールがいると、トーレスが活きないのかもしれないね。スペインはアラゴネスのお爺ちゃん次第だなあ。攻撃の豊富なタレントを、どう組み合わせるか。トーレスのワントップが有力なようだけど、そうなるとビジャが控えか。それももったいないね。

中西 ツートップにすると、今度は中盤を削らなきゃいけない。結局、4-1-4-1の可能性が高いと思いますが、スペインはキャスティングが命でしょうね。

原 でも、スペインもポルトガルも後ろに不安があるんだよね。

中西 そうなんですよ。スペインはセンターバックが厳しくて……プジョルとマルチェナで大丈夫かな。イングランドからファーディナンドとテリーを借りるっていうのは……(笑)。

──ところでグループCの勝ち抜きですが、どう予想されていますか。

原 やっぱりイタリアは勝ち残るだろうな。あの固い守りは計算できるからね。手堅い試合をしながら、しっかり勝ち上がっていくと思うよ。後ろは磐石だし、中盤ではデ・ロッシが物凄く伸びてきた。いい選手だよね。

中西 デ・ロッシとガットゥーゾがハードワークして、ピルロが試合を創る。後ろだって安定してる。チームの骨格が出来上がっているのは大きいですね。

原 大きいのはトニの存在だよね。守備的な試合をしていても、長いボールを前線に蹴れば、しっかりと収めてくれる。

中西 収まるし、反転してドリブルできるし、ヘッドも強い。モチベーションだって高いと思いますよ。ブンデスリーガで優勝と得点王に輝きましたが、UEFAカップを逃した悔しさがあるでしょうし。今回、輝く可能性を秘めたひとりだと思います。

(以下、Number705号へ)

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