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中京女子大学レスリング部――伊調千春、吉田沙保里、伊調馨 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2004/08/12 00:00

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【虎の穴潜入記】中京女子大学レスリング部――伊調千春、吉田沙保里、伊調馨

松原孝臣=文

text by Takaomi Matsubara

 アテネで、「全階級金メダルか!?」と言われる競技がある。女子レスリングである。

 日本の世界大会での実績を考えれば、そう期待するのも無理はない。過去、16度の世界選手権で日本が得た金メダルは41個。昨秋の世界選手権では、7階級のうち5個、しかも五輪に出場する4選手は(五輪は4階級)、皆金メダルだったのだ。

 その4階級のうち、じつに3階級に代表選手を送り込んだのが、中京女子大学レスリング部である。48kg級の伊調千春、55kg級の吉田沙保里、63kg級、千春の妹の伊調馨だ。

 中京女子の底力を裏付けるのは3人ばかりではない。どの階級でも全国大会の上位に名を連ねる選手は、中京、中京……。五輪代表選考を兼ねた今年2月のクイーンズカップでも5階級で優勝。各階級のベスト4を見れば、計28名のうち15名が、中京女子大学、中京女子大学附属高校、あるいはOGだった。各階級に複数の実力者がそろっているから、48kg級では伊調千春と坂本真喜子という同門による代表決定戦になってしまったほどだ。

 世界の王者が日本であり、日本の頂点に君臨するのが中京女子なのである。

 となれば、一度は部を訪ねてみなければ。

 名古屋駅から東海道本線で東京方面へ15分、大府駅下車。タクシーで10分も行くと、中京女子の校舎が見えてくる。

 女子大訪問は2度目、15年ぶりである。友人に連れられた東京の某女子大は、それはそれは、華やかな雰囲気だった。単独行ではないにしても、ワンレンボディコン、メイクをきめた女子大生に奇異の目で見られる中を歩くのは緊張を強いられたものだ。

 正門からキャンパスへ。すれ違う学生は、ジャージにサンダル姿ばかり。15年前の残像とのギャップに拍子抜けしつつ、夕刻、練習場へと向かう。

 徒歩5分、目指す建物の玄関で靴を脱ぎ、地下2階へ。すると、「キエーッ」「イヤアーッ」と、凄まじい絶叫が聞こえてくる。さすがは世界を視野に入れるレスリング部、その練習はやはり、凄まじいものなのだろう。

 階段を降り、入り口が見える。恐る恐る、足を踏み入れた。

 ところが、聞こえていた絶叫の源は、剣道部員たちなのだった。武道場と名づけられたスペースの半分を、剣道部が占めているのだが、打ち込みのたびに、声が発せられる。その光景に目を奪われてから、手前の20名を超える集団に気づく。レスリング部だった。マットは1面のみ、質素な設備だ。突然の見学者を気にするそぶりもなく、主将の吉田沙保里の号令のもと(剣道部員の叫びで何を言っているか聞き取れない)、練習が進められる。

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