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“魔法のシェイク”が岡田ジャパンを
90分間走らせるチームに変える!?
 

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byTamon Matsuzono

posted2009/12/07 10:00

 今秋のオランダ戦で岡田武史サッカー日本代表監督は「90分間持たなかった」とその完敗の理由を述べた。彼がSAMURAI BLUEの戦士たちに要求しているのは「90分間プレスをかけ続けられる強い身体」。

では、日ごろから猛練習をしている代表選手たちは、さらなる強化を図るためには何をすればいいのだろうか? 最新の科学的アプローチで究極の肉体を考えてみた。

 来年に控えるサッカーのワールドカップ、南アフリカ大会。監督として2度目のワールドカップに挑む岡田武史監督は、選手たちに「90分間走れること」を常に意識させてきた。

 まさに走れることが、日本の生命線であると。

 しかしサッカーのむずかしいところは、持久力を鍛えれば90分間高いパフォーマンスを発揮できるかと言えば、決してそうは言えないところにある。

 立命館大学の藤田聡准教授は、「90分間戦うということは、持久力だけではなく、フィジカル・コンタクトにも強くないとダメで、つまり持久力とパワーの両方を求められていることになります」と指摘する。

 岡田ジャパンは有酸素運動と無酸素運動を高いレベルで両立させようとしているのだ。そうなるとトレーニングに向かう選手たちの日々の意識が重要になってくる。合宿や遠征で一朝一夕に植えつけられるものではない。

最新の栄養学を駆使し、パワー&キレのある肉体を作る。

 藤田准教授は、選手たちが高いパフォーマンスを実現するために科学的根拠に基づいた意外な視点を提供する。栄養学、である。

「日本代表選手クラスの体重は70kg台前半。しかし、海外の選手を見ると80kg近い選手もいるので、パワー負けするケースが見られます。そうした場合、やはり筋肉をつけて対抗していかなければならない。栄養学の観点では、トレーニング直後にプロテインを摂取すると、筋肥大を補助する働きがあるんです」

 ただ、やみくもに筋肉の鎧をまとうだけだと身体の“キレ”が無くなるのも事実。筋肉をつけると同時に、動きにキレを生む無酸素運動のための栄養も必要になってくる。無酸素運動の動きを助けるエネルギー源には、クレアチンリン酸とグリコーゲンがある。

「陸上の100m走のような競技では、筋肉が瞬時に多量にエネルギーを消費するので、その場合はクレアチンリン酸を必要とします。ところがクレアチンリン酸は6秒ほどしか働かず、その後はグリコーゲンが働き出します。しかしクレアチンというサプリメントを摂取することで、筋肉のクレアチンリン酸の貯蔵量を増やし、6秒ではなく、もう少し長く筋肉を働かせることが可能になります」

 なるほど。ひょっとしたら陸上の100m世界記録保持者、ウサイン・ボルトの後半のスピードは、クレアチンリン酸が他の選手よりも数秒長く働いているのかも……そんな科学的な見方も可能になるのだ。

写真

50m走ではそれほど速くないという日本代表FW岡崎慎司。だが、絶妙なポジショニングでスピード不足を補い90分間戦い続ける。岡崎の肉体に、さらに瞬発力が加われば……

運動直後に特別な“シェイク”を飲めば90分間戦える!?

 そこからはグリコーゲンの出番になるが、これはヒトが貯蔵する糖分。糖分の貯蔵量を高める手段としては糖質とプロテインの同時摂取がある。プロテインを構成するアミノ酸が体内のインスリン分泌を促し、運動後のグリコーゲン補給をさらに高めるのだ。

 藤田准教授は、プロテイン、クレアチン、糖質を組み合わせた「シェイク」の摂取が90分間走り、戦い続けるには有効という見方をしている。

「運動した直後にシェイクを飲むことを習慣化することが大切だと思います。慣れてないと、美味しくないって言う選手が多いんですが(笑)。摂取することで、直接、試合でのパフォーマンスを高めるというよりも、日常の練習で『あと2、3回は余分にダッシュできる』、つまり余分に負荷がかけられることを理解すれば、選手たちも栄養学にもっと興味を持つようになると思います」

 栄養学、ひいてはスポーツ科学が選手の強化を助ける時代。ピッチの上だけではなく、研究がチームを強くする時代でもあるのだ。

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