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打開せよ、松井大輔。/日本代表特集 『変革なくして4強なし』 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

PROFILE

photograph byMasahiro Fukuoka

posted2009/07/09 11:31

打開せよ、松井大輔。/日本代表特集 『変革なくして4強なし』<Number Web> photograph by Masahiro Fukuoka

“局面を変える男”という期待のもと、彼は代表に登場した。そして今、プレーが得点に直結しない状況に、誰より彼自身が危機感を感じている。
残り1年。結果を求めて松井は変わる。

「しょうがない」

 湧き上がる感情を押し殺すため、松井大輔は心の中でそうつぶやいた。6月17日メルボルンでのワールドカップアジア最終予選オーストラリア戦。2-1で敗れた試合後、「出場のチャンスを活かせなかった」と言う報道陣に悔しさが膨らんだ。

「最後までプレーしたかったけど、久しぶりの試合で、自分としてはある程度の満足はできた。でも、評価は得られなかった。やっぱり目に見える結果がないとアカン」

 '08-'09シーズン最後のゲームで抱いた感情は、この1年ずっと感じてきた思いだった。移籍加入したサンテティエンヌはずっと下位に低迷し続けた。リーグ最多優勝回数を誇る名門クラブは、最終節でギリギリ残留を決めるという体たらく。松井にとっても出場機会に恵まれたとは言えない1年だった。

「秋に監督が代わり、数試合先発出場することができたけど、勝利という結果が出ないから、メンバーを変えるようになった」

 もちろん、自分自身が結果を残していないことの影響も、どんなに内容が良くても結果が出ないことには評価が上がらないことも自覚している。プロの世界で生きているのだから、当然のことだ。

「結果を残していれば、試合には絶対使ってもらえる。でもそれができていないのは、自分自身の問題。状況を変えなくちゃいけない」

松井はオーストラリア相手に一歩も引かなかった。

 リーグ戦終了後、ウズベキスタンで代表に合流。6月6日ウズベキスタン戦はベンチ外、6月10日カタール戦は後半13分から途中出場したが、パスが繋がらず、連動性を欠いたチームの中で孤立する場面も目立った。唯一の“欧州組”として迎えたオーストラリア戦は、「いつも以上に気合が入る」という背番号10をつけて挑んだ。3月15日以来、先発出場から遠ざかっていたが、不安は何もなかった。

「ひとりだけ違うというプレーを見せたかったし、違うんだという印象を残したかった」

 開始1分過ぎ、DFをドリブルでかわし、ファウルを誘う。その数分後には守備で見せた。球際での強さが光り、一対一での勝負にひるむこともなかった。他のアジアの国とは違うオーストラリア選手に戸惑う日本選手の中で、松井のプレーからは余裕が感じられた。

 前半終了間際にもドリブル突破で相手を4人、5人とひきつけたが、パスは出せずタックルで倒されて終わった。後半訪れた2度のシュートチャンスにゴールを決められず、足を痛めた松井は後半23分、ピッチを後にした。

「もう少し中まで切り込めればよかった」

 反省の言葉を口にした松井。個人技で得点には絡めず、代表生き残りのボーダーライン上に立つ彼の世間での評価は、オーストラリア戦でも変わらなかった。

<次ページへ続く>

► 【次ページ】 「俺がなんとかするのに」という言葉に表れるジレンマ。

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