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早稲田大学 約束されていた勝利。 

text by

村上晃一

村上晃一Koichi Murakami

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photograph byTamon Matsuzono

posted2008/01/31 15:43

早稲田大学 約束されていた勝利。<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 国立競技場には、冷たい横殴りの雨が降っていた。キックオフ1時間前、早稲田・中竹竜二監督はきっぱりと言った。

 「去年の1月13日に負けてから、きょうのことだけを考えてきました。スローガンは『権丈早稲田を証明する』。今年やってきたことをすべて出すだけです」

 昨季決勝での敗北からちょうど1年である。あの日、3連覇を目指した赤黒ジャージーは関東学院の青い波に飲み込まれた。就任1年目の中竹監督は勝負の怖さを学び、のちのキャプテン権丈太郎は、関東学院の胴上げを誰よりも長く見つめていた。

 勝負に絶対はない。しかし、勝利の可能性を極限にまで高めることはできる。

 「天候、ミス、ジャッジなど、すべての要素を含めてなお、50-0で勝つ準備をしなければ、勝利を確実なものにできない」

 2年目の中竹監督は、現代ラグビーの勝敗を分けるとされるブレイクダウン(ボール争奪局面)を鍛え上げ、今季の特色である素速く前に出続けるディフェンスを磨いた。スクラム、ラインアウトは大学随一の安定感。ドライビングモールはどんな相手からもトライできる決め手となるまで強化された。

 決勝に向けては、慶應の動きを分析し、Bチームが実演しての実戦練習も重ねた。加えて、準決勝は負傷欠場していた主力3人も復帰。タックルの強いFL有田幸平、CTB長尾岳人に、大黒柱FB五郎丸歩である。まさに準備万端だった。

 対する慶應の林雅人監督は早稲田の強さを認めた上で言った。

 「とにかく低いタックルで地面に倒す。慶應らしくいくしかない」

 午後2時、キックオフ。

 風下の早稲田は慶應SO川本祐輝のキックで陣地を押し込まれ、得意のモールも慶應の低い姿勢での防御に前進できず、苦しい時間帯が続いた。しかし、「どんな状況でも勝てるチーム作り」(権丈)が事態を好転させていく。慶應ボールのラインアウトを事前の分析通り奪取。スクラムで圧力をかけ、地面に転がったボールに対する反応の速さで、慶應にチャンスボールを渡さない。

 前半18分、慶應ゴール前でのスクラムを得た早稲田は、ぐいと押し込むとタイミング良くNO8豊田将万がボールを持ち出してインゴールへ。ゴールも決まって7-0とリード。その後は互いにミスもあって、7-3で前半を終えたが、早稲田の優位は明らかだった。

 後半16分、早稲田2本目のトライに事前準備の確かさが凝縮されていた。

 慶應陣中盤でのスクラム。意図的に最前列の右PR畠山健介が前に出た。慶應FWを早稲田から見て左に押し込む。この形で豊田がサイドアタックをすれば慶應はSO川本が詰めてくることも分析済み。豊田は川本を引きつけ、後方から走り込んできたSH三井大祐にパス。三井が抜け出したところに長尾が走り込んだ。スクラムの強さと、緻密な分析力、それを遂行するプレーの正確さが試合を決定づけた。以降は、モールでもトライをあげ、守っては低いタックルを連発して慶應をノートライに抑え込む。

 安定したスクラムと獲得率の高いラインアウトは強みではある。しかし、今季の早稲田を支えているのは、誰一人休むことなく続けられる前に出る防御だ。2年ぶり14回目の優勝は、その結実だった。

 表彰式後、権丈のリードで早稲田ラグビーに伝わる勝利の歌『荒ぶる』がこだました。慶應の低いタックルをものともせずに前進したキャプテンは笑顔で語った。

 「すべての準備を整え、自信を持って臨んだ。最後はセットプレーからターンオーバーしてトライ。今年らしくできたことが勝因です」

 敗北の屈辱を原動力にチームの到達目標を高めた「権丈早稲田」、盤石の優勝だった。

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