サハラマラソン挑戦記BACK NUMBER

星のサハラ砂漠を遥々と歩く……。
サソリも怪我も遭難も慣れてきました。 

text by

松山貴史

松山貴史Takashi Matsuyama

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photograph byTakashi Matsuyama

posted2011/05/06 06:00

星のサハラ砂漠を遥々と歩く……。サソリも怪我も遭難も慣れてきました。<Number Web> photograph by Takashi Matsuyama

オーバーナイト・ステージ、レースの合間に「サッポロ一番」を食す

気温50度の炎天下。3人の日本人選手はやがて無言に。

 しばらくすると、事務局の車が現れ、「ここはコースじゃない、引き返して西へ進め! 今回は大目に見てやるから、引き返せ!」と怒られる。

 コース以外を走ると、失格、またはペナルティーが科せられるのである。渋々引き返して歩いていると、目印を勝手に引き抜いて遊んでいるベルベル人の子供たちを発見。

 犯人はこいつらか……叱りつけたかったが怒る元気さえもうないので無視して前へ進む。

 昼過ぎにCP6到着。あと残り10km。スタッフの方に、「この道は今大会で一番平坦な道よ! 頑張って!」とエールを送られるが、今までの体験から眉唾物の話として聞き流す。残り10kmといえども我々だと3時間はかかる。練習で和敬塾のある目白周辺を走っていた頃は、10kmなら流しても50分で走れていたので、とても悲しくなる。

 オーバーナイト・ステージのスタート直後からずっと3人で歩いてきて、猥談から日本の政治まで、ありとあらゆるジャンルの話をしてきたが、「松山貴史のちょっといい話」もvol.43を数え、どうやらとうとうネタ切れであった。

 昼を過ぎると、気温は上昇し50度を記録。暑さも加味して三人とも無言で歩く。全く進まない。というより、スタッフの言っていたとおり、恐ろしく平坦な一本道が続くだけなので景色が変わらないのである。

 苦肉の策の「しりとり」も5ターンほどで終わり、「マジカルバナナ」はルールを説明するのが面倒だということで却下。ペインキラーの効き目も切れ、痛みで思うように歩けない。最悪の状態だ。

 そんな辛い状態が2時間ほど続いたが、ゴールが見えれば元気百倍。ビバークが見え始めた。心なしかスピードもあがり、みなプラスの事しか言わなくなった。いよいよゴール。タイムは30:28:23で時速は2.69km。ひどいタイムだが、そんなものはどうでもよかった。

 ゴールしてみると、なんとコーラが配られるサービスがあると噂されていた。

 さすがフランスの大会(?)、「やることがいちいちニクイぜ」と思っていたのだが、到着が遅すぎてコーラが無くなっていた。そしてよく分らない炭酸オレンジジュースを飲む羽目に。ここで飲むコーラは「人生で一番美味しい」と聞いていたので、凄く残念だった。

 久しぶりに明るいうちにゴールできたので、色々な雑務を行うことに。

 砂漠生活6日目にもなると羞恥心は無くなっており、至るところでヌーディスト・ビレッジの如く水浴びが行われていた。自分も雰囲気に乗じて水浴び場へ。貴重な水なので恐る恐る髪を濡らすのだが、1リットルでは全く足りないことが判明。日本に帰った際は節水しようと心に誓う。

 次に洗濯。ペットボトルを切り取り、簡易洗面器を作る工夫を教えてもらう。こうして技術革新は起こっていくのだなと、勝手に感動。

【次ページ】 遭難してボロボロになり最下位でゴールした日本人。

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