Sports Graphic NumberBACK NUMBER

楢崎正剛「勝ちたい、負けられない」 

text by

高川武将

高川武将Takeyuki Takagawa

PROFILE

photograph by

posted2005/04/14 00:00

SPECIAL FEATURES

[彼らの証言(2)]楢崎正剛「勝ちたい、負けられない」

高川武将=文

text by Takeyuki Takagawa

 バーレーン戦、ひとまず勝ったのはよかった。ただ、イラン戦を含めて絶対的な強さや安定感がない。後方から見ていて、今の日本代表に危機感を感じているのでは?

 「特別な不安を持って臨んでいるわけではないんです。システム変更やスタメン変更の問題とかは監督が決めることだし(苦笑)。……やらなきゃしゃあないから。でも、イラン戦は全員が揃ったのは現地に入ってからで、昨年の初めの頃の悪い状況にならなければいいなという心配はありました。チームとして自信は失っていなかったし、雰囲気はよかったんで、何とかもってたかな。ただ、まだまだこのままではいけないな、という感じで2試合を終えてしまいましたね」

 ――それはそうでしょう。

 「こうすれば絶対に点を取れるという形を、研究もされてるけど、それを上回るものが必要だった。ボールの運び方も、もっと全員が連動して動くスムーズさも。集まる期間が短かったし、もっともっとコミュニケーションをとることも必要ですね。確かに、個人の能力で賄える部分はあるんですけど、それだけではやっぱり……」

 ――問題はコミュニケーション不足?

 「いや、足りてないということはない。試合中に要求の声は出るし、話すことだけがコミュニケーションでもない。でも、練習で、試合で同じように動けるような練習法がもっと必要ですね。11人全員でなくていいから、関係する3、4人が徹底して動きを確認しあっていれば、試合で困らないで済むんちゃうかなと。ゴール前の技術も大事ですけど、そこまでもっていく形がまず大事。まあ、ジーコもシュート練習が多いですしね(苦笑)」

 ――トゥルシエのときは型にはめられていた。

 「両極端ですね。極端過ぎます。その中間がバランスいいかなと思うんですけど(笑)」

 ――イラン戦、4-4-2については?

 「それまで3枚でやってきたわけだから、正直驚いたけど、相手のシステムに合わせる狙いだったのかな、と。事前の説明?― 具体的にはなかったですね。守りのリスクはあるなと感じて、それは皆も思っていたかもしれない。いざ試合が始まってみれば、2トップが前にいて、予測と違っても、変更することもなかったのでね……でも、個人で上手く対応してたとは思います」

 ――……それでいいんですか?― 何かコミュニケーション不足を感じるなぁ。

 「何か……やたら悲観的ですね(笑)」

 ――(笑)。最近の試合を見ていると、どこか面白くないというか、何か伝わってくるものがないというか……。面白いですか?

 「う~ん、皆、必死にやってるし、W杯に出たいし、勝ちたい。ただ、勝ちたいというより、負けられないというプレッシャーが大きくて、慎重になってるところがある。イラン戦でも、自分たちの武器であるパスを最初から繋いでいければよかったけど、どうしてもセーフティに蹴ってしまうことが多かった。戦い方としては仕方ないんですけど、相手の特徴を消すことだけではなくて、自分たちの特徴を出すこともしていかないと」

 ――昨年のアジア杯を契機に代表がクラブチームのようにまとまった。プラス面は大きいと思いますが、マイナス面も出てきてはいないですか?― 仲良し集団のようになって、停滞してるようなところは?

 「そういうことはないです。確かに、もっと上を目指して、練習でやらなあかんことはあるやろとは思うけど」

 ――コミュニケーションをどうとっているのかな、と。例えば、昔はピッチ外でも議論したりしていたと聞く。

 「うん、まあ……そう言われると確かにそうなのかなと感じることはあるんですけどねぇ……究極は目を見ればわかるという組織になることで、皆、そう思ってやっているんですけど……難しいですよね。でも、上手くいかないこともありますけど、問題があればチーム内で解決できると思う。話し合いもしてますしね」

 ――チーム内でいい意味での喧嘩はある?

 「それはあるでしょう。ないとは思えない」

 ――楢崎選手にとっては、1年ぶりのW杯予選先発出場でした。昨年5月のアイスランド戦で膝を負傷してから、サブに回った。今回は川口選手の骨折で出番が巡ってきた。

 「大事な試合だったですし、(川口の)ケガがなければ出番はなかったでしょうね。GKはそう簡単に代えられるポジションではないから。親しい人によく言われましたよ、お前チャンスやから頑張れよ、と。いや、俺が出るとは決まってへんしね、と言ってましたけど。ケガが治ってすぐに戻ってくるんちゃうかなとか思って(笑)。

 今回は、ポジションを奪い返そうという気持ちは全くなくて、チームに勝利をもたらすことだけを考えてました。親善試合なら自分のアピールの場としてやってもいいけど、最終予選なんでね。日本中の期待を背負ってゴール前に立つわけですから、喜びというより責任感が湧いてきて、冷静に普段通りのプレーをしよう、と。出てない時期は長かったですけど、ずっと、自分はレギュラーだと思って心と体の準備はしてきましたから」

(以下、Number625号へ)

ページトップ