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ユルゲン・クリンスマン「ドイツは強くなったのか」

 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

posted2005/10/27 00:00

 「いつまで選手を競わせて、チームを固めないつもりだ?― ドイツ一のGKが試合の時間にゴルフをしているなんてありえない!― レーマンは飛び出すタイプだが、カーンは待つタイプでプレーに違いがある。だからこそGKを固定してDFとの連繋を深めるべきだ」

 クリンスマンの支持率は、コンフェデ杯で3位になるまでは右肩上がりだったが、オランダ戦を境に下がり始めている。「キッカー」誌のアンケートでは、W杯優勝国をドイツと予想する人は常に40%を越えていたのだが、9月には27.8%にまでダウンした。

 クリンスマンも、自分の立場が危うくなり始めたことは、誰よりもわかっている。“文学カフェ”の会見で、突然これまでの方針を覆してしまった。

 「クラブでレギュラーを勝ち取った選手だけが、代表になる資格があると言ってきたが、それは難しい。トップクラブには20人もの代表選手がいて、全ての選手にこの基準を求めることはできない」

──でも、控えにしか過ぎない選手でW杯を勝てるんですか?

 「昨年のユーロでギリシャ代表には、所属クラブでレギュラーの選手は何人いた?― それでもレーハーゲルは優勝した。問題ない」

 現在ドイツ代表の約4分の1が、所属クラブで先発の座を失っている。バイエルンのMFシュバインシュタイガーとダイスラー。シュツットガルトのMFヒッツルスベルガーとDFヒンケル。そしてシャルケのFWアザモア、チェルシーのDFフート、リバプールのMFハマン。今までの方針を貫けば、彼らは代表に選ばれないことになる。

 オランダ代表のファンバステン監督は、同じようなことを公言し、実際にその方針に従って予選突破を決めた。ダービッツだろうが、ファンボメルだろうが、実戦から遠ざかった選手を、ファンバステンは必要としない。

 だが、クリンスマンは、あっさりと覆してしまった。頭が柔軟なのか、それとも信念がないのか──。いずれにせよ、イラン代表MFのアリ・カリミにバイエルンで先発を奪われるような選手がW杯で活躍できるのか、という不安が消えることはない。

クリンスマンの“フィロソフィー”とは?

 その会見の翌日、今度はカーンがクリンスマンに噛み付いた。選手がクリンスマンを名指しで批判するのは、今まで一度もなかったことである。「キッカー」誌のインタビューで、カーンは咆えた。

 「まず、私たちは失点をゼロにしなければいけない。それでこそ対戦相手が、ドイツに恐れを抱く。クリンスマンの“パワー・タクティクス”は、攻撃的過ぎる。W杯で勝ちたかったら、まず守備だ!」

 クリンスマンは攻撃サッカーを標榜し、一応コンフェデ杯で3位に入ったものの、結局ブラジルとアルゼンチンという強豪には勝てなかった。何より失点が多過ぎる。コンフェデ杯では5試合で11失点。GKのカーンが怒らない方がおかしい。

(以下、Number639号へ)

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ユルゲン・クリンスマン

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