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ハンドボールの一番熱い日。 

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byYukihito Taguchi

posted2008/02/14 16:11

ハンドボールの一番熱い日。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 「これまでになく、韓国との差は縮まったと思う」

 そう話す選手もいたが、後の祭りである。

 1月30日、代々木で歴史を変えるチャンスがそこにあった。「メジャー」になるためのパスポートは、日本ハンドボール界の手からこぼれ落ちた。

 一方で政治的な落としどころも見守っていく必要がある。2月2日時点でアジアハンドボール連盟(AHF)は日韓に対する処分を発表していないが、「やり直しに参加しただけでなく、開催した日本の方により重い処分が下るだろう」と除名処分を含めた対決姿勢を崩していない。

 さらにAHFのアーマド会長はアジア五輪評議会の会長も兼務しており、2016年の東京五輪招致にも揺さぶりをかけてきた。この動きに日本五輪委員会の一部には動揺が走った。

 これから日本サイドとしては、したたかに「こと」を運ぶ必要がある。

 当初から日本は、AHFとの間で妥協点が見出せない場合、中東と東アジアによる「東西分割案」を提唱しているが、東京に来日したIHF理事は「(分割案に関しては)IOCの見解を聞く必要がある」と積極的な解決には及び腰だ。

 また、韓国ハンドボール協会のチョ・イルヒョン会長は、再予選中に行われた記者会見で日本と共同歩調を取るとしながらも、

 「東アジア連盟が出来た場合は、会長を日本の渡邊佳英会長にお願いしたい」

 と話した。この言葉からは、韓国が日本を支持しているかのように受け取れる。しかし再予選の開催地、新連盟の会長など実務の面倒なことは日本に任せ、スケープゴートに仕立てるというシナリオに見えなくもない。もともと予選やり直しを積極的に画策したのは日本よりも韓国だったのだが……。

 さらに日本はやり直し予選終了後に、再予選の主催者であったIHFから「収益の7割を配分せよ」と要求され、対応に苦慮している。事態を静観していると四面楚歌の状況になりかねず、日本の外交力が試されるだろう。

【次ページ】 「中東の笛」騒動の勝者となるために。

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