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石川直宏 「覚醒したスピードスター」/日本代表特集 『変革なくして4強なし』 

text by

小宮良之

小宮良之Yoshiyuki Komiya

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2009/07/10 11:30

石川直宏 「覚醒したスピードスター」/日本代表特集 『変革なくして4強なし』<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

天性の快速ドリブラーが、得点の才能も開花させた。
彼が数多の苦悩を経て身につけた動き出しの感覚は、
パスの名手が揃う代表でこそ、真の輝きが期待できる。

 石川直宏は人をときめかせる異能を持っている。タッチライン際で彼が走り始めると、何かが起きそうな予感が漂う。彼にボールが渡る。観衆は息を呑む。沈黙が突如として歓声に取って代わり、ショーが開幕する。ギリシャ神話に登場する伝説の天馬ペガサスの如く、跳ねるように疾走するフォームは理屈抜きに美しい。果敢なドリブルでサイドを破る姿はサイドアタッカーの典型である。

 しかし、今季の石川はいわゆるサイドアタッカーの枠を超え、ゴールマシンとしてもスタジアムに歓喜を与えている。

Jリーグ10年目にして開花したゴール・ゲッターの才能。

 今シーズン開幕は故障で出遅れながら、9節大宮アルディージャ戦のハットトリックなどを含め、13節終了段階のリーグ戦で日本人選手最多の6得点を記録。ナビスコカップでも、決勝トーナメント進出を賭けた清水エスパルス戦の決勝点など2得点を決め、ゴール量産態勢に入っている。Jリーグ10年目でシーズン5得点が最高だっただけに、この数字は特筆に値する。

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「ゴールを取れる位置に顔を出す、それは心がけています」と説明する石川はまさに神出鬼没。昨季までは定位置の右サイドにいることが多かったが、今季は右かと思えば左、時にはど真ん中を駆け抜ける。

「ナビスコの清水戦のゴールもそうですが、一度右サイドに預けてからゴールを狙えるポジションを取っています。そこでリターンを受けてワントラップでDFをかわし、シュートを流し込みました。他にもFWがくさびになってその裏に飛び出す形や、左サイドから切り返してシュートなど、ゴールを狙える角度、場所に顔を出すことでプレーの幅は広がっています」

 トップレベルの欧州サッカー界では今や中央の守りをこじ開けるのは至難の業だけに、サイドから得点に絡む選手が欠かせない。メッシ(バルセロナ)、C・ロナウド、ロッベン(レアル・マドリー)、アルシャービン(アーセナル)、ベナユン(リバプール)、A・ヤング(アストン・ビラ)、リベリー(バイエルン)らはサイドを主戦場とするが、果敢にバイタルエリアに飛び込んで得点も狙う。ウィンガーの進化型である。

<次ページへ続く>

► 【次ページ】 サイドのこだわりを捨てると、見えなかった風景が見えてきた。

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