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連続PP記録を狙うベッテルに暗雲が。
レッドブルのアキレス腱「KERS」。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2011/05/06 10:30

連続PP記録を狙うベッテルに暗雲が。レッドブルのアキレス腱「KERS」。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

中国GPのレース前パレードにて。ドイツ人同士として公私ともに親しいシューマッハとベッテルは、ベッテルが10歳の時(1997年)に出会っており、シューマッハがその才能を認めたという間柄だ

F1版ハイブリッドシステム「KERS」がベッテルを阻む。

 それは、ベッテルが駆るレッドブルRB7が、今年も脆さが同居する繊細なマシンとなっていることが判明したからである。

 昨年もレッドブルは序盤戦で点火系に問題が発生したり、ホイールナットに不具合が出るなどして貴重なポイントを失って混戦となった。ただし、これらのトラブルはいずれも重大な欠陥ではなく、シーズンが進むとともにレッドブルは信頼性を回復させた。

 それが今シーズンは少し様子が違う。今年、レッドブルが抱えている問題点は、KERS(運動エネルギー回生システム)だからだ。

 KERSはブレーキ時の制動力をエネルギーに転換して加速時に活用する、F1版ハイブリッドシステムである。すでに'09年から導入され、マクラーレン、フェラーリ、ルノー、BMWザウバーの4チームが採用したものの、開発されたばかりということもあって当時はまだ有効な武器にならなかった。

 コスト面での問題もあって、2010年はチーム側の紳士協定によって1年間、使用を自粛した後に今年、復活したという代物である。

 つまり、ほかのトップチームはKERSを開発・研究、そして実戦で使用した経験を持っているのに対して、レッドブルは今年初めてKERSを使用するのである。そして、いまレッドブルが直面している問題こそ、2年前にマクラーレン、フェラーリ、ルノーらが向き合っていたKERS特有の問題なのである。

KERSがなくても勝てるコースなら良いのだが……。

 開幕戦では金曜日に試したものの、うまく作動しなかったため、土曜日以降は取り外して、KERSなしで予選と決勝レースを戦った。

 金曜日の深夜0時ごろ、ホテルへ帰るベッテル一団と遭遇したが、恐らくチームと「KERSを搭載するか否か」で熟議していたものと考えられる。幸い、オーストラリアGPが行われたアルバートパーク・サーキットはメインストレートが800m弱と短く、ほかにもそれほど長い直線がないため、KERSを搭載していなかったことが大きなハンディにはならなかった。

 しかし、開幕戦で発生させたKERSの問題を解決できないまま迎えた2戦目のマレーシアGPで、KERSの信頼性はレッドブルにとって無視できない問題となっていたのだ。

【次ページ】 KERSのトラブルは第2戦からどんどん深刻化していった。

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セバスチャン・ベッテル
レッドブル

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